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「Impulse Response」エコー問題を考える

16/03/05初稿
18/12/29プリエコー関連にまとめなおし


■「プリエコー」は本当にヤバいのか

・Impulse Responseも見てみる
 先の記事で、「Phase Response」の設定によっては波形が変形することを具体的に見てきました。
 が、実際の音楽においてどんな影響があるかは別問題であることは言うまでもありません。
 また、位相応答とインパルス応答には、以下のバーターのような連動関係があることも解りました。

  Linearは波形変形がないがプリエコーが発生する
  Minimalはプリエコーがないが波形変形が発生する

 波形変形については上記の通りですが、エコーに関して説明に示される例は≪Resampler-V≫をはじめとして普通「インパルス応答」です。“インパルス”は自然界にある音ではなく、その“応答”はあくまでもフィルタ特性を示すものであって、実際の音楽への影響そのものではないでしょう。
 よくLinear系特性は「プリエコーがあるのでアタック音が立ち上がる前から音が聞こえてしまって不自然」などと評されますが、音声波形のリコンストラクション特性と直結させてイメージするのはちょっと疑問に思っています。

 ということで、「Phase Response」とリンクしている「Impulse Response」についても少し考えてみました。
 Impulseではなくもうちょっと自然の音・音楽の音に近い波形のプリエコーは本当に気にするべきものなのか、という観点です。「変形」とバーター要素ですので、その影響度をちょっとでも知っておきたいと思いますので。
 全くちゃんと解っていないのですが、解っていない故に理解を深めるためとりあえず(以下、理解の仕方は間違ってるかも知れませんが、事例としてはやってみたそのままです)。

・エコー付加の実際:4kHz
 どんな波形がいいか考えてみたのですが、「1周期だけいきなり立ち上がって消える4kHz(0dB)のサイン波」はどうでしょう? 音楽の基音は4kHzくらいまでしかないようですし、-∞から一気に0dBになる以上に急峻な立ち上がりはありませんので。なお、基音より高周波数の倍音成分は、基音よりレベルは必ず低くなりますのでエコー成分も小さくなるハズです。

 その波形(1648フォーマット)を≪WaveGene≫やバイナリエディタを使って作り、アップサンプリングでプリエコー・ポストエコーがどんなふうに付加されるのか試してみました(48kHzなのはサンプル数を整数個にするため、16bitなのはバイナリエディタで弄りやすくするためです)。
 リサンプラは先の記事と同じ≪Resampler-V(SoX) 2.1≫を用います。目的からして充分なので2倍です。
 中図がMinimal、下図がLinear設定です。

4000HzResponse1648.png

 Linearのプリエコー、そんなにヤバいものでしょうか。そもそもエコーと呼んではいますがくっつく波形は元の4kHzじゃなくナイキスト周期(24kHz)ですし。目立つレベルとしてはそれが数周期ある程度だと思いますが、でっかいアタック音の前にこれを違和感として感じることがあるのかちょっと疑問です。このレベルの24kHzの単独サイン波はおそらく聞こえないでしょうし、無音からフルビットに立ち上がるアタックも普通音楽にはないでしょうから。
 個人的には、Minimalのポストエコーの大きさと長さも気になります。

・エコー付加の実際:1kHz
 さて、「4kHzのフルスケールアタック音」っていうのもある意味“非現実的”ですよね(ていうかサンプリング定理違反(苦笑))。ので、さらに試しに1kHzの場合も採取してみました。

1000HzResponse1648.png

 エコー成分はかなり目立たなくなっています(時間軸密度の違いは脳内変換お願いします(笑))。
 これらを見ると、デジタルフィルタのエコーは「かなり大きなインパルス的な高周波成分」についてのみ気にすればいいのではないかという気がします。
 実際の音楽波形の周波数成分としてそれがどのくらいあるのかが問題ということになりますが、素人には解りません(笑)。

 そもそも、“自然界の音・音楽の音”は立ち上がりも収束も上図のようなものではありませんし、いろんな周波数成分が入り交じりますので、どんなふうにどこまで影響があるかはなんとも言えませんけれど。

・フィルタ特性を“ゆるゆる”にすると
 本項16/04/13追記。
 LPFの遮断特性を緩くすると、デメリットは低下するハズです。どれくらい違うのでしょう?
 ≪Resampler-V(SoX)≫の設定を最も緩くして4kHzの結果を採取してみました。

  Pass Band:91.3% → 54,2%
  Stop Band:100.0% → 120.0%
  Stop Band Attenuation:-198dB → -96dB

4000HzResponse1648 大甘設定

 上がMinimal、下がLinearです。
 Linearは思ったほど劇的な差ってカンジでもないです。Minimalは効果アリ? もちろんイメージングノイズ遮断特性の劣化とバーターの効果ですけれど。

 いずれにしろ、「変形」と「プリエコー」、どっちをどこまで気にするかは“お好みで”ってことですね。


■ハイレゾだとどうなるか

 とりあえずサンプリングレート48kHzのソースについて見ましたが、これって、同じ波形でもサンプルレートが違うと影響度は異なるのではないでしょうか。もし、ハイサンプリングだと“影響”が緩和されるなら、それはハイレゾの効能と言えるでしょう。
 もちろんフォーマットとして、ですけれど(実際に聴いて差があるかは別)。

 ということで、調べてみました。本稿では、その主旨からハイレゾはハイサンプリングのことを指します。


■Impulse Response(の代替特性)

 ふたたび、「1周期の4kHz -0dB」波形につき、サンプルレートが異なるデータを作って比較します。
 これは一般的な「Impulse Response」ではありません。その理由などの詳細は前稿を参照ください。

 上で見た48kHzをx2x2x2した場合(上図)に加え、96kHzをx2x2(中図)、192kHzをx2(下図)してぞれぞれ8fs化した場合につき、MinimalとLinearを示します。

・Minimal

4000HzResponseハイレゾ比較 0per


・Linear

4000HzResponseハイレゾ比較

 すべて8fsで揃えていますので、同じ時間スケールでの比較です。サンプリング周波数が高くなるとエコー成分はどんどん減っていく様子が解ります。
 ちなみに≪Wavosaur x64 1.1.0.0≫の表示限界以下で見えないワケではありません(別途拡大表示して確認しました)。


■デジタルフィルタにみるハイレゾの効果

 以上より、デジタルフィルタにおける「Impulse Response」の絶対的影響は、ソースのサンプルレートが高くなるほど小さくなると言っていいのではと思います。
 まあ、当たり前ではありますが、実際に波形で比較してみるとその“程度感”などが解ってヨイですね。

 つまり、「Linear系特性にするとプリエコーが発生する」と言う(言われる)デジタルフィルタのデメリットは、ハイレゾ(ハイサンプリング)になればなるほど軽減されるということです。
 もちろん同じ周波数帯について見た場合です。人間の可聴域や音楽の周波数はハイレゾだと移動するってワケではありませんから、例えば「ハイレゾの場合は2倍・4倍の領域(ナイキストに対して同じ比率の領域)で比較しなければ意味がない」といったことはないでしょう。

 言い方を変えると、「フィルタ特性による音の差が少なくなる」「“デジタル臭さ”が減る」といった表現もできるでしょうか。
 もちろん、これはDACの仕組みにも依存するので絶対的一般論とは言えませんし、実験はサイン波でのものですから、当然ながら実際の楽曲においてどれくらい有意差があるかは別問題ですけれど。


 なお、(後日理解した)そもそも論ですが、「1周期だけいきなり立ち上がって消えるサイン波」は、サンプリング定理に則った波形ではありません。
 最初と最後の瞬間は矩形波と同じような鋭角になっていますから、帯域制限されていない状態になるためです。
 前後にエコーが付くのは、リサンプラによって帯域制限されたから、という見方もできます。
 「アタックの前に波形が出てくるのは不自然」
 「サンプリング定理に則っておらず帯域制限されるデータの方が不自然」
のどちらと考えるか、ということでしょう。



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