ルッツふるっつフリップりっぷ

16/08/13初稿

 ザ・アイスの真央は今年も美しかったです。おまけに超きゃわわでした。しかもメチャカッコよかったです~
 という話ではなく(笑)。
 ボストンで行われたフィギュア世界選手権2016女子FSにおける「ルッツ・フリップのエッジ判定」を見てみました。

 前から疑問はあったのですが、この大会は「なんか思惑あるんじゃないの?」と言いたくなるような状態でしたので遂に。明らかなリップやフルッツの認定があったのではと。タイミング逃して今更になっちゃいましたけれど。

 ただし、「ISUテクニカル判定の精度はいかほどか」を個人的に納得することだけが目的です。選手個人に対し思うところは全くありません。

 選手皆様には敬称略で失礼します。


■やったこと

 上位8位までの8選手のルッツ・フリップ全24ジャンプをBDレコーダのコマ送り再生(フレーム単位の静止画。つまり1/30秒)で確認し、個人的にエッジがアヤシイと判断したものを抽出。
 それをISU(テクニカルパネル)がどう判定したのかをまとめました。

 離氷時のエッジ角度はもちろんですが、離氷に至る軌道も見ながら判断したつもりです。ISUの判断を確認するという目的から、若干厳しめに判断しています。

 全員が何らかのカタチで3回組み込んでたワケですが、4回じゃないということはルッツ・フリップどちらかを2回、どちらかを1回にしているワケです。ざっくりですが、1回にしている方がその選手の苦手だと推察されます。

・メドべぇ・・・3F+3T,3Lz,3F  SPはFのみ
・アシュリー・・・3F+3T,3F,3Lz!  SPはFのみ
・宮原さん・・・3Lz+2T+2Lo,3F,3Lz
・ゴリさん・・・3Lz+3T,3Lz,3F!  SPはFのみ
・ラジ子・・・3Lz+3T,3F,3Lz
・GG・・・3Lz+3T,3F!+2T,2Lz
・真央・・・3F+3Lo,2Lze,3F+2Lo+2Lo  SPはFのみ
・理華っち・・・3F+3T,3Lz,3F  SPはFのみ

 個人的に?と思ったジャンプをボールドしてみましたが、概ねそういうカンジではないでしょうか(御覧の通り、個人的に?ではなかったのにISUが何か付けてた例はありません)。
 やっぱり女子にとってはどちらかはできても両方の“跳び分け”はとてもムズカシイように見えます。
 唯一ラジ子には「?」に至るジャンプがありませんでしたが、その実情は稿末にて。

 ちなみに、個人的にはルッツって変態ジャンプだと思ってます(苦笑)。「一瞬にしてスケーティング軌道と逆回転する」なんて。ルッツさんが跳んだころはトリプルじゃないですし。
 スケーティング軌道のエネルギーを使えないどころかそれを打ち消してさらに3回転分のエネルギーを一気に得なければならないワケですから、そりゃ“リアルルッツ”は女子には酷ってモンでしょう。3Lz跳ぶ筋力やタイミングを鍛えたら3Fが苦手になる、なんて有りそうな気がします。

 考察資料の出典はすべてフジテレビ「世界フィギュアスケート選手権2016女子フリー」(16/04/03地デジ放送)です。
 以下に示すのは離氷より3~5コマ(0.1~0.2秒分)くらい前の画です。離氷の瞬間は逆に解りにくいケースが多かったので(動きが速くなってるのでスローで捉えきれずブレブレになる場合が多い)。スーパースロー撮影じゃない限りテクニカルパネルも同条件のハズです。
 このあと離氷までの間に、明らかにエッジが正しい方向に(いい例ではエラーの方向に)変化していた例はありません。

 ルッツがアウトエッジ踏み切りになるのはカウンターカーブ軌道のまま跳ぶ結果ゆえ、だから正しいルッツ判定の“代表特性として”踏み切り時のエッジを規定しているのだと理解しています。アウトエッジで順カーブ軌道を描くのは無理(*)ですから、踏み切り時を見れば軌道も見たことになる、と(フリップも考え方は同じ)。
 ですから、たとえ、もし「トウを突いた時は逆だったが0.1~0.2秒後の踏み切りの瞬間には正しいエッジにもどった」としても(肉体的にできそうにありませんが)、そんな“あっちいったりこっちいったり”するエッジワークは「クリーンなエッジ」とは認定されませんよね、ISUさん?

*:たとえ出来たとしてもフィギュアスケートとして間違いでしょう(もはやアクロバット)。


■フリップ

 まずはいい例からいきましょう。我らが真央の3Fです。
 2本目なのは、この放送ではカメラアングルがこちらの方が好ましかったからです。

真央F2:よい例(靴底が見える)2

 靴底見えてます(ブレードの留め金が判るくらい)。靴を斜め上から撮ったカメラ画像で靴底がアウトから見えてるってことは明らかにエッジはインってことですよね。軌道もキレイにフリップです。

 次に、個人的にアヤシイと思ってISUも「!」を付けているゴリさんの3F。

ゴリF1:これで!で済むの?(ブレード光ってるぞ)2

 真央の例とは逆にインサイドから靴底が見えてます。フリップの軌道で入ってきましたがコマ送りしているウチにアウトに変化したものです。その過程のこのコマでブレードがキラリと光りましたから(会場の照明を反射してるということ)、エッジは明らかにアウトでしょう。

 次は個人的には「e」だと思ったけれどISUは「!」にとどめたGGの3F。

GGF1:これで!で済むの?2

 これ、先入観なく見たらルッツの離氷前にしか見えなくないですか? 離氷までの軌道もばっちりカウンターですし。
 素人目にはどう見てもエッジエラーですけど…
 今大会だけならたまたまかとも思いますけれど、15-16シーズンはシーズン通してずっと大甘だったと思います。今大会のこれはマシな方で、もっとアウトなのに認定された例もありました。
 「ジャッジ席から見にくいから」なんて言い訳にならないのは記すまでもありません。
 「e」だと基礎点下がりますが「!」ならそのままですしエッジによるGOE減点幅も小さくなります。実際プラス付いてますから得点への影響は大きいですよね。


■ルッツ

 こちらもいい例から。GGの鉄板3Lz。

GGLz1:よい例2

 カンペキなアウトエッジ、軌道もバッチリです。直前の3Fと比べちゃダメです(笑)。

 続いて、「完全にクリーンとは思えなかったけれど不明確とまで言えるか微妙」だと思った宮原さんの3Lz。アテンションは付きませんでした。

知子Lz1:ギリ?2

 同じく微妙だと思ったアシュリーの3Lzは「!」判定でした。

ワグLz1:これで!なら…2

 アシュリーはいわゆる逆回転なので、失礼ながら左右反転した画も参考として付記しておきます。

ワグLz1:これで!なら…2反転

 軌道は最後までカウンターで、エッジもギリギリアウトに踏みとどまってるように見えますが、確かに微妙。エッジが“不明確”な場合「!」になるのですから、まあ仕方ないかなと。
 微妙な時にアテンション付けるか否か、素人とプロの判断が異なるのはアタリマエでしょう。しかし、アシュリーのレベルで「!」なのですからこれ以上インに傾いてたら「!以上は確実」、ということですよね。
 しかし、だとするならこの認定はどうなんでしょう?


メドLz1:これで認定?2

 素人目には、エッジは“明確にイン”に見えます。カウンターカーブで入ってきた後トウを突く際に体重がイン側に移動したところのコマですので、この後アウトに“揺り戻し”てはいません。少なくとも“不明確”だと思います。
 なのになんで「!」すら付かないのでしょう? プロの目にはこれが「クリーンなバックワード・アウトサイド・エッジからの踏み切り」に見えるということです。軌道や体重移動の流れを加味するともはや見る角度の問題とは思えません。不思議です。
 認定ですからGOEもたっぷり。もしこれが「e」判定だったら、基礎点は6.0→4.2、GOEも「e」の場合は-2~-3がガイドですから、少なく見積もっても2~3点は下がってたことになります。

 なお、メドべぇのエッジは今シーズン(GPシリーズ・ユーロ・世界選手権)GPFのFSで3Lzに「!」が一度付いただけです。ていうか回転不足も含めてミソついたジャンプはこれだけ。すげ~

 もうひとつ、個人的には「e」だと思ったけれどISU的には認定の理華っちの3Lz。

理華Lz1:これで認定?2

 申し訳ないですけど、ほぼ真後ろから見た左足はイン側に傾いてますよね。これも数コマ前まではアウトだったものが離氷動作でインに変化したもので、この後の揺り戻しはありません。でも、「e」でも「!」でもなく認定。

 ISUテクニカルハンドブックの記述からは、素人には全く理解不能です。

間違ったエッジでの踏み切り(フリップ / ルッツ)
フリップはバックワード・インサイド・エッジからの踏み切りである。ルッツはバックワード・アウトサイド・エッジからの踏み切りである。踏み切りエッジがクリーンでなく正しくなければ、テクニカル・パネルは、記号“e”(エッジ)および記号“!”(アテンション)を用いてジャッ ジにエラーを示す。テクニカル・パネルはスロー・モーションの再生を見てもよい。テクニ カル・パネルは踏み切りがはっきりと間違っている場合に記号“e”を用いる。記号“e”が 付いたジャンプの基礎値は、SOV 表の V の欄に記載されたとおりとなる。テクニカル・パネルは踏み切りが明確ではない場合に記号“!”を用いる。この場合、そのジャンプの基礎値は減点されない。両方の間違いともジャッジの GOE に反映される。

出典:2015hb_single_08-16j.pdf

 ルッツは「バックワード・アウトサイド・エッジからの踏みきり」なんですよね?
 JSFの説明を見るとますますワカラナクなります。

ルッツは、少し長めに左足の外側エッジに乗って後ろ向きに滑走し、左肩をぐっと入れて右のトウをついて跳びます。滑走で描いてきた軌跡と反対の回転をかけながら踏み切るので難しいとされるジャンプです。「左足外側エッジ」というのが重要なポイントで、これが「左足内側エッジ」に体重を乗せてしまうと、正しくないエッジと判定されて減点対象となります。
出典:http://skatingjapan.or.jp/figure/trick.html

 「滑走軌跡(ISU言うところのバックワード・アウトサイド・エッジでの滑走)と反対の回転をかけながら」「左足内側エッジに体重乗せるとダメ」なんですよねぇ?

 上述の通り「バックワード・アウトサイド・エッジ=カウンターカーブを描きながら踏み切る跳び方の結果として」アウトエッジで離氷するのがルッツだと理解しているのですが、今回スローで見てみると、突いたトウ側に重心乗せて左足は氷に“添えるだけ”状態にしてアウトエッジを保ち摺り足のように抜いていく、というような跳び方もありますね。
 ISU的には認定のようです。

 そしてさあ、堂々唯一の「e」判定、我らが真央のルッツ(鬼門)。

真央Lz1:軌道が明らかにインなので確かにeかも…2

 残念ながら明らかにインでしょう。豪快なカウンターカーブで入ってくるのですが、最後はハッキリと“~”を描いてましたし(画像でもうっすら判ります)。
 「インサイド・エッジで踏み切ったらダメ」「左足内側エッジに体重を乗せてしまうとダメ」だというのですから、「e」なのは仕方ありません。
 しかし、だとするとメドべぇや理華っちのルッツが「!」も付かず認定なのは全く仕方なくないです。


■結果

 判定の甘辛や精度を語る場合、テクニカルパネルが変われば変わってしまう可能性があるため、同試合で見る必要があるでしょう。
 加えて、特定選手だけでなく複数選手の判定結果から傾向をみる必要があるでしょう。
 今回そのように見た結果、素人な個人的には、ISUテクニカルパネルのエッジ判定精度は「かなり低い」と思いました。
 2014たまアリ世界選手権記事でジャンプの回転不足判定を調べた時の感想と同じですね。ただ、この時はエッジに関しては明らかな違和感は感じていないので、やっぱり今回は特に私とISUの乖離は激しかったようです。

 こういう精度で何点も違っちゃうのですから選手はたまらないと思います。選手と同列に語るつもりは毛頭ありませんが、観てる方もタマンナイです。解説者もタイヘンですね。表情のことしか言えなくなるワケです(苦笑)。
 繰り返しますが、あくまでも素人な個人的判断としては、ですが。

 精度が低い理由、それを改善しない理由は不明です。当然「ISUとしては精度は問題ないと判断している」からでしょうけれど、私にはそう見えず(そう見えてない方は結構いらっしゃると思います)、さらに言うとかなり“レッテル貼り”があるように思えてなりません。

 もっと言うと、メドべぇ(理華っちは言うに及ばず)にしても、そのシーズンに「!」が付いた事例があるのですから「普段問題ないから今回も大丈夫でしょ」などと思って見逃したハズはありません。なのにあのエッジでノーエラー。レビューすらしていないとすると不自然です。
 レビューしての判定だったらより不自然だと思いますけど(爆)。

 もちろん真実は解りませんが、少なくとも「観ている側(ファン)との乖離」が無視できない状態になっているのは間違いないのではないでしょうか。ですので、それを解消する努力はすべきだと思います。
 まずは「どれをレビューしたか」と「その映像」の公開くらいはしてほしいです(できれば3対0だったのか2対1だったのかも)。Resultにひとつマーク追加するだけですから出来ないハズありません。
 ていうか公開しない理由を思いつきません(Resultは通信簿だって仰ってるくらいですから、どう評価したか公開するのはアタリマエでしょう)。ファンにとっても選手にとってもメリットだと思いますけれど。
 精度に問題ないと思ってるなら問題ないですよね。

 ジャッジ匿名制廃止より何倍も意味があると思っています。

 仕組み的には、レビューカメラを少なくともあと1台増やすべきでしょう。現在はおそらくジャッジ席の右手側に1台のみですので、左側にも1台入れて45度角度の違う映像で判定すべきでは。そもそも、テクニカルパネル席はリンクの真ん中ではなくジャッジの右手側にあるのでリンク右半分と左半分では見え方が変わります。カメラはさらにその右側に置いてるので「レビュー画像も同じ角度」になってしまいますよね。
 経費などの都合で増やせないのなら、1台の設置位置を試合ごとにランダムに変えるのもいいかも知れません。
 まあ、「レビュー要否判断」の精度が低いままなら意味ないですけど(苦笑)。


■おまけ

 いわゆる「捻挫ルッツ」。

ラジLz1:捻挫系の例:激しく捻挫。確かにアウトか…2

 ラジ子の左足すごいことになってる。アウトに傾きすぎてもはやブレードが見えません。
 なんて器用な…


■番外編

 本項17/01/02追記。
 16/11/19にテレビ朝日で放送された「フィギュア グランプリシリーズ2016 中国大会 女子ショート」では採点待ち時間にジャンプのスローレビュー映像が流れており、大変興味深いものでした。
 中でも3Lzのエッジ軌跡(と判定の乖離?)がかなりハッキリ判る画がありましたので追記しておきます。

ケイトりん3LZ:中国2016SP(2) 2

 最後に枝毛みたいになっているのは離氷直前に横向きになったブレードでひっかいたためです。
 念のためですが、ケイトりんのジャンプはアシュリーと同じく時計回りです。
 さらに念のためですが、もちろん、ケイトりんをサゲる意図など全くありません。むしろ好きな選手です。


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