ジッタ対策にできること

15/01/10初稿

 冗長度ありすぎな気がしてきましたので、ジッタについて考えた記事をリクツと実事情に分割しました。


■ジッタ対策

 上記記事にて、ジッタの発生とその影響について私としての現時点での理解をまとめました。一応、ですけれど。
 さて、それを踏まえると、デジタルオーディオにおいてジッタ低減するため実際にできることは何でしょう?

 といっても、実質的な影響のリクツがヨクワカリマセン(アパーチャ誤差とはあんまり思えない(苦笑))から、どこまで抑えればいいのかすら解りません。
 とりあえず、「少ないに越したことはない」精神で考えることにします。「聴こえなくてもリッピングエラーはヤダ」と同じ価値観です(笑)。
 実効的な効果があるのかないのか、それは別問題になりますね。

・機器間I/Fを選ぶ
 とりあえずMCLKとDACチップの関係から、以下は言えるのではないかと思います。

・まずは極力DACチップに突っ込まれるMCLKが「原発振ダイレクト」なこと
・そのためには「Tx側と非同期にできる機器間I/F」を使うこと

 現実的にはUSBアシンクロナスモードを使うのが一番よさそうです。

 「機器間I/Fを使わない」って考え方もありますが、ここではコンポシステムに限ろうと思います。
 PCにサウンドカードを実装するような場合は“一体型PC-Audio”ですね。PCIやPCIeはアシンクロナスですし。
 I2Sは機器間I/Fではないと思いますのでここでは対象外としています。一般ユーザとしては原則として“一体型を自作する”時のみ出てくる概念として捉えておこうと思っています。

 もちろん、PLLを使うI/Fが絶対ダメというワケではありません(PLL機能・性能にもいろいろあるでしょうし)。I/Fのリクツに即した「RxでのPLL動作の安定度向上」対策することになりますね。
 この工夫(チューニング)のネタはシステムによって千差万別でしょう。
 例えばERIでは現在HDMI-Audioをやっていますので、GfxカードのコアクロックやメモリクロックをいじったりしてHDMI転送クロックPLL生成の安定化を試みています。といっても、実際意図したように効いているかを確認する術はありません。こうじゃないかと考えてやってみてそれっぽい変化したらしめしめとほくそ笑む、そんな楽しみ方の範疇です。一般論にはなり得ないでしょう。

・原発振を低ジッタ化する
 次なる野望はそもそも「原発振のジッタ性能を良くすること」でしょう。王道はズバリ低ジッタの発振器を使うことです。

 しかし、原発振=水晶発振器のジッタ性能は何をもって判断すればよいのか、最近まで「?」だったと思います。
 何故かジッタは本来別モノの発振精度(周波数安定度:単位ppm)で語られることが多く、どんな根拠で“代替特性”としているのかずっと疑問でした。
 今はとりあえず、水晶振動子/発振器メーカNDK社の「オーディオと水晶の関係 ~音の品質とクロックの位相雑音~」というページ(*)の記述でいいのかなと思っています。

*:http://www.ndk.com/jp/ad/2013/001/index.html

 低位相ノイズ型製品のアピールページではありますが、「周波数安定度と位相ノイズは関係ないが、“結果的に”OCXOなどは位相ノイズ特性もよくなっている」旨記されています。ただ、オーディオ業界ではこれまで散々ppm値でジッタを語ってしまったので、今更「関係ないッス」とは言えないのかも知れませんが(苦笑)。

 水晶の性能パラメータとしては、周波数成分のノイズが上記「位相雑音」であり、それを時間軸上のゆらぎとしてとらえたものが「ジッタ」とのこと。
 TCXO(Temperature Compensated crystal Oscillator)やOCXO(Oven Controlled crystal Oscillator)、はてはルビジウムがどれだけいいのかは本情報をもって考えた方がよいと思っています。

 さて、発振器は改造しないと取り替えられないので、最初からそういう製品を導入する必要があります。
 一般的なPC-Audioとはちょっと違いますが、以下のような製品が明確に「低位相雑音発振器搭載」を謳っています。

・DENON製ディスクプレーヤ(兼USB-DAC):DCD-SX1  https://www.denon.jp/jp/dcdsx1/technology.html
 「超低位相雑音(≒低ジッター)」とあります。搭載されている発振器は、型番はDENON特注っぽいですが、マーキングからNDK製では。



・SONY製HDDプレーヤ:HAP-Z1ES  http://www.sony.jp/audio/products/HAP-Z1ES/feature_1.html#L1_50
 「低位相雑音クロック採用」とし、通常品との違いを示すグラフを載せています。
 システムアップの楽しみはありませんが、その代わりソースまで内蔵することでSONYがトータルチューニングできます。
 ネットワークプレーヤとの違いは、ソースをネットワーク上から取ってくるか内蔵HDDから取り出すかであり、MCLKについては原則的有利不利はありません。ざっくり、汎用ネットワークと接続しデータ通信することによるデメリットとローカルHDDのデメリット(*)の違いになると思いますが、どっちが音質に不利なのでしょうね。
 前者はネットワークシステムのチューニングで変わりそうですが、後者は“SONY任せ”ってことですね。趣味としては前者?(笑)

*:ちなみに、光学ディスクとHDDを“回転系”として括っちゃうのはどうかと思っています。
 例えばHDDには回転数可変サーボはない点、光学ピックアップと磁気ヘッドじゃ物理負荷が大違いな点、ディスク精度が桁違いな点(HDDは脱着しませんし)など事情は大分違うと思いますので。

  ←SSDバージョン出せばいいのに

 他にも、最近は「低位相雑音水晶(クリスタル)搭載」を謳っている製品は結構あるようです。ただ、“低位相雑音性能”もピンキリかも知れませんが。


■マスタークロックジェネレータとは何か

 「発振器は取り替えられないので」と記しました。
 が、「“マスタークロックジェネレータ”を使えば改造しなくても原発振を換えられるのでは?」と思えますよね。
 けれど、どうにも個人的には「?」なところが多いんですよね…

 そもそも疑問なのは、ユーザは「ジッタの低さ」を求めているハズなのにメーカは「発振精度の高さ=安定度の高さ」を謳っている場合が多いことです。上述の通りそれらは原則別モノですし、別にppm値が低くなくてもオーディオ再生にはあまり問題ないハズだと思うんですよね(*)。
 例えば+20ppm精度の原発振を持つDACユニットに精度0ppmの外部クロックを入れたとしても、60分の音楽再生時間が0.072秒長くなるだけです。これを音質変化(音程の違い?)として感じ取れるとは思えません。
 温度や経年による変化はサンプル単位で変動したりしませんから、“音程変化”はあっても長周期的なもので、短周期的には安定しているハズですし。
 上記NDK社のページにも以下の記述があります。

オーディオ機器においては、長期間における安定度よりも、短期間における変動が少ないことが求められますので、周波数安定度としては±30ppm~±100ppm程度の特性を持ったSPXO(*6)がクロック源として多く使われています。
出典:http://www.ndk.com/jp/ad/2013/001/index.html

 意訳すると「ppm値は普通のでいいッス」ということですね(笑)。

*:参考:http://fidelix.jp/technology/jitter.html

・マスタークロックジェネレータの効果とは
 さて、もし「ジッタ低減」を目的とするなら、製品の機能として以下は絶対押さえる必要があると思います。

・普通の水晶より明らかに低ジッタ性能の発振モジュール
・DACチップにダイレクトに供給できるMCLK出力

 特にふたつめは必須と思えます。だってDACユニット内でPLLかけたらそのPLL性能に上書きされちゃいますから。
 だとすると、「低ジッタ(実は超高発振精度)モジュール」の代表格である「ルビジウムモジュール」は256fsや512fsを発振しているハズです。ですが、実際には10MHzが規格っぽいんですよね。これを突っ込まれたDACユニットは、22.5792MHzや24.576MHzといったMCLKを内部でPLL生成しなくてはなりません。
 MCLKでなくLRCLK(サンプリング周波数)を供給する場合も多いですが、この場合はクロックを受けた機器が内部PLLで256倍や512倍してMCLKを生成しているハズです。整数倍(ていうか2のべき乗)はPLLに有利な逓倍数だとは思いますが、せっかく外部からクロック入れてPLLすんの? って思っちゃいます。
 なんかヘンだなと。

 加えて外部からのクロック入力にはノイズ混入などいろんなデメリットもあるでしょうから、内蔵原発振よりもそんなに良くなるとはあんまり思えないんですよね。確かに、原発振でなくてもジッタ性能がバツグンによい発振器の出力をバツグンに高性能なPLLするなら、原発振に匹敵する低ジッタクロックが得られるかも知れません。しかし、外部クロック入力機能があるようなコンスーマ機器はかなりの高級機ですから“自前の発振器のジッタ性能”がそんなに悪いとも思えません。
 私が無知なだけかも知れませんが…

 ということで、続けて、クロックを入力される側の例として、イコライザとして人気のBEHRINGER製DEQ2496(業務用)のマニュアルを見てみます。

~前略~ この信号は、セルフタクトおよびセルフシンクロ方式です。(複数のデジタル機器を接続する際に重要です)です。したがってDEQ2496と接続したAES/EBUデバイスの間に、ワードクロック接続は必要ありません
~中略~ もし、デジタル録音システムに含まれる複数のデバイスに例えばデジタルミキサーをつなげると、接続されているすべてのデジタル機器は、統一されたワードクロック信号を用いて同期する必要があります
~中略~ このワードクロック入力は、アナログ入力を使用する場合にのみアクティブになります。

出典:http://www.behringer.com/assets/DEQ2496_P0146_M_JA.pdf P.18

 データの流れの中にシリーズに入れてデジタルIN/OUTで使う場合、上記の通りRxとして同期生成したクロックで処理を行った後そのクロックで出力しますから、敢えて外部からクロックを入れる必要はないということですね。機能ブロック的には「通すとデータ処理されるS/PDIFケーブル」と見なせるでしょう。
 一方、複数機器(おそらくソース源)をパラレルに用いる場合はシンクロが必要になるということのようです。アナログの場合はAD変換してから処理するワケですから、確かにAD変換用クロックはアナログ出力側と同期させないとダメでしょう。でないとサンプル数が変わっちゃいますから。
 そうだよね、ってカンジです。

 ということで、上記ルビジウムクロックジェネレータや業務用イコライザの仕様からすると、

「クロックジェネレータ」は原則として業務用機器であり、主用途は「低ジッタ」もさることながら「正確な時間精度(安定度)をもっての複数機器間の同期

ではないかと思っています。主用途は同期ですが、制作音源のピッチが狂わないように周波数精度が必要、と。特に「温度差」によって曲の長さ(サンプル数)が変わっちゃったりしたら困りますので、OCXOなどが使われるのでしょう。
 ただし、AD変換においては「アパーチャ誤差」の発生を抑えるという意味で低ジッタ性能が必要になりますし、複数のAD変換装置を同時に使って録音(あとでミキシング)するような場合やアナログ変換を介しての編集などでは外部同期が必要になりますから、AD変換としては同期と低ジッタは両方必要ではあるでしょう。

 では、コンスーマ用機器の(本来の)用途は何でしょう?
 複数のソース源をミキシングしながら聴いたり一旦アナログに戻してエフェクトしたりはフツーはしないと思いますので、

「S/PDIFを使ったトランスポートとDACユニット間の外部同期」によってPLLを排することであり、単体の低ジッタ性能は副次的

だったのではないかと思えます。普通の原発振のジッタ性能でもS/PDIFのPLLより絶対優秀でしょうから、これは意味あると思います。
 Txだけに投入してもRxでPLL必要になりますし、Rxだけに投入したら先の記事の通りサンプル過不足が発生してしまいます。ので、やっぱり「同期用」が基本ではないでしょうか。
 SONYがCDP-R1とDAS-R1で実装していた「ツインリンク」と同目的です。同期とPLL排除が目的ならこのようにDACユニットからクロックを供給すればよいワケですから、ぶっちゃけクロックジェネレータユニットの意義は「?」です。
 「低ジッタ」を謳っていない製品もありますしね(後述)。

 ところで、例えば±20ppmというスペックは「必ず+20か-20ppm誤差がある」ではなく、当然「-20ppm~+20ppmに入っている」という意味です。ということは、もし内蔵発振器がバラツキ0ppmの“アタリ”個体だったら、恐ろしいことに個体バラツキの意味では外部クロックの効果は「ない…ていうか悪化?」ってことになりますよね。
 やっぱり、低ppmの本来の意義はジッタでも個体バラツキでもなく「温度変化や経年変化への耐性が高いこと」な気がします。

・マスタークロックジェネレータの発振は“低ジッタ”なのか
 ものすごくソモソモなハナシですが、上記を踏まえてちょっと見てみます。

・Esoteric製G-01  http://www.esoteric.jp/products/esoteric/g01/
 ルビジウム発振です。しかし、実は当製品のwebページには「低ジッタ」というアピールはひとつもありません。「安定性」「高純度」といった文言になっています。 [ps]や[dBc/Hz]といった単位のジッタに関するスペック提示もありません。
 業務用ブランドTASCAM製品(CG-2000他)も同様「安定性」をウリにしています。
http://tascam.jp/product/cg-2000/

・Antelope製Isochrone 10M  http://www.antelopeaudio.com/jp/products/10m-atomic-clock
 これは一応業務用。
 こちらもルビジウム。ことさら「低ジッタ」をウリにはしていませんが、「フェイズノイズ(位相雑音)」つまりジッタ性能は示されており、マニュアルによると「-140dBc/Hz@10kHz」のようです。
 が、これは上記NDKページにあるグラフに当てはめるとノーマル水晶発振器レベルです。
 見方違うのかな?

 これらを見ると、やっぱり「マスタークロックジェネレータ」という製品の基本的用途は「正確な時間精度(温度や経年変化への高耐性)」「同期」じゃないのかなと思います。もっと現実的には、ビデオコンテンツ作成時の画と音のシンクロっていう目的もありそうです(オーディオだけの見地からするとあんまり関係ないので調べていませんけれど)。

 一方、明確に「低ジッタ」をアピールしている製品もあるようです。MCLKの低ジッタ化を目指す場合は「低ジッタ性能がスペックで確認できる」&「MCLKダイレクト出力(入力機器がPLLしなくてよい)を持つ」モノがよいのだろうと思います。
 例えばMUTEC製MC-3+はジッタ性能「1ps以下」だそうです。「クロック精度(±0.1ppm)」とは別に示されています。MCLKは256fsになるようですが。
http://www.hibino-intersound.co.jp/mutec/3684.html


 MCLKはデジタルオーディオのキモです。
 外部クロックと内蔵クロックではその信号品質が大きく異なるでしょうから、ジッタの変化に限らず、間違いなく音質に影響するでしょう。
 ケーブル換えても激変するそうですがさもありなんです。


■おまけ

・水晶の発振周波数個体差を可視化する
 同じ周波数仕様の水晶デバイスでも、“ppm値の範囲内で”発振周波数は微妙に違っています(くどいですがそれはジッタではありません)。
 試しに以下の実験してみました。APIはもちろん排他WASAPI。

・波形再生ソフト:≪WaveGene 1.50≫ 1200Hz-3dBのサイン波 1648にて
・再生機器:UDA-1
・録音ソフト:≪WaveSpectra 1.50≫ 1648にて
・録音機器:SB-DM-PHD

 フォーマットとしては再生録音とも48kHzですが、UDA-1とSB-DM-PHD搭載水晶の発振周波数個体バラツキの違いが、録音したサイン波のサンプルポイントが時間と共にズレていく現象として可視化できるハズです。

    UDA1→SB(2)
    UDA1→SB(1)

 同じ録音の中から抽出したものです。
 一方はサンプルポイントの中間がピークっぽいですが、一方はサンプルポイントがほぼピークになっています。ゼロクロスラインの方が判りやすいでしょうか。この違いが周期性を持って変化していくことが確認できました(そんなに長い周期じゃないです)。録音側をPCのオンボLINE-INにした場合も同様でした。
 なお、SB-DM-PHDのOUTとINを直結するアナログループバックではズレないことも確認しました。再生(DA)と録音(AD)のMCLKが同じ水晶発振源だからです。オンボのループバックでも同じでした。

 SB-DM-HDの方は48kHzの512fsの水晶搭載が判明しているのですが、UDA-1の方は情報ありません。44.1kHz系1系統だとしたら48kHz系はPLLかも知れませんが、マクロな発振精度は原発振に支配されるでしょうから本件には影響与えないと思います。

 こりゃ、音楽制作現場などでは確かにクロックシンク必須と感じます。

・GPS方式クロックジェネレータ
 これって“原発振は空の上”ってことですよね。結構高級な水晶でも、同じスペック同型番であっても周波数の個体差は避けられないと思いますが、GPS方式の場合は個体差がないということになるのでしょうか。
 「TxとRxに別個体を使っても“同期できちゃう”」っていう特殊事情がありそうです。


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