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周波数成分を聞いて見る

15/01/12初稿
15/03/04改訂
18/12/31煩雑な情報をカットして周波数成分と帯域制限の観点で改訂

 サンプリング定理を理解する上で必須の「周波数成分」についてここにまとめます。
 フーリエさんの言う「すべての波形はサイン波で構成されている」こと、サンプリング定理ではナイキスト周波数以上の周波数成分はカットされていること、つまり「サンプリング周波数が違えば帯域制限が異なる」こと(による影響)を可視化してみようと思います。


■周波数成分を視覚で確認する

・波形の構成要素
 ところで、当たり前ですが、自然界の音は単独サイン波ではありません。それらの周波数とは、「その発音体(以下楽器)に“特徴的な波形”の繰り返し周期」です。すべての波形は複数周波数のサイン波を無限(*)に含むことで“音色としての波形”を形成しています(フーリエさんがそう言ってます)。

*:理論的には、です。もちろん現実的にはどこかに発音体の限界があるでしょう。

 つまり、楽器の“音色としての波形”は、

・時間ドメイン的には・・・楽器に特徴的な音色としての波形でありサイン波ではない
・周波数ドメイン(*)的には・・・音色の周波数+整数倍周波数のサイン波で形成される

ということです。

*:すべてサイン波として考える。“波形”の概念はない

 整数倍の複数のサイン波のことを「倍音」といいます。フーリエさん的に言う「倍音」は、基本的に豊かに含まれないと本来の波形にはならないのですね。音楽的に言う「倍音」はちょっとニュアンスが違うことがあるようですので、区別して考えた方がよさそうです。

・ノコギリ波の周波数成分
 では、音色の周波数成分について実際に見てみましょう。
 音色としてはノコギリ波を選びました。「ノコギリ波」「三角波」「矩形波」などが基本波形と呼ばれるようですが、中でもノコギリ波は(振幅値は違いますが)2倍、3倍、4倍…のサイン波を足していけばいいので解りやすいためです。
 楽器の音色の周波数は4kHzくらいまでらしいです(後述)。

 まず、スペクトルを見ておきます。
 1200Hz/-3dBノコギリ波のスペクトルはこんなカンジです。サンプルレート384kHzのファイルにて(ナイキスト以上のカットはしていないファイルです)。

ノコギリ1200Hz

 次に、フーリエさんの言うことを視覚的に体験してみます。
 波形生成と言えば≪WaveGene 1.50≫。8個の波形を合成できますので、サイン波を順番に足していき、サイン波だけでノコギリ波を合成してみました。

1.1倍のみ

ノコギリ生成1


2.2倍音を合成 1200Hz+2400Hz

ノコギリ生成2


3.3倍音まで合成 1200Hz+2400Hz+3600Hz

ノコギリ生成3


4.4倍音まで合成 1200Hz+2400Hz+3600Hz+4800Hz

ノコギリ生成4


 途中省略させていただいて

5.8倍音まで合成 1200Hz+2400Hz+3600Hz+4800Hz+6000Hz+7200Hz+8400Hz+9600Hz

ノコギリ生成8

 15/02/28追記:裏取りのため、以下で使う1200Hzノコギリ波2448ファイルを≪Wavosaur x64 1.1.0.0≫でカットオフ10kHzのLPFしたデータのスペクトルを示します。9倍音(10800Hz)以上はカットされ、上記と同じ8倍音(9600Hz)までで合成した波形になっているハズです。

ノコギリ2448 位相反転 LPF10kHz

 2448フォーマットですから、ナイキスト周波数関連の事情を無視すると20倍音までで構成されていたハズですが、もっと低サンプルレートの波形(倍音合成イメージ)になっています。
 つまり、周波数成分を「足していった場合」と「減らした場合」で同様の結果が得られたということです。
 逆に、アップサンプリングで2448を2496にしても原則2448の波形(倍音合成イメージ)のままであることも確認しました。「アップサンプリングでは合成すべき倍音は増えない」ためです。

 矛盾ないようですね。

・周波数成分の帯域制限とハイレゾフォーマットの効能
 ここではサンプリング周波数が高くなる効能に絞ります(ビット深度は含みません。DSDも含みません)。

 さて、上記の4倍までのサイン波周波数しか記録再現できない場合と8倍までの場合を比較すると一目瞭然ですが、仮に「倍音を20kHzくらいまで含むノコギリ波」をPCM記録しようとした際、倍音をどこまで含められるかで音色の再現性が異なります。
 つまり、サンプリング周波数が高いと帯域制限が緩くなって高域の倍音が増え、元の音色の記録再現性が高くなるということです。

 「20kHzは聞こえないから」と言われると「そうかもナ~」とも思いますが、「音色の波形変形は認識できないから」と言われると「なにお~」って思っちゃったりします(苦笑)。

 JVCのK2 HD プロセシング説明資料にも以下のようにあります。
CDフォーマット44.1kHz/16bitでは、例えば10kHzの基音の場合2次高調波までしか収録が出来ません。
したがって、3次以上の高調波成分は削られてしまい、元の複雑な波形が再現出来なくなり楽器本来の音色・音質感が変化してしまいます。

出典:https://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/k2hd/pdf/k2hd_2013_0107.pdf

 「10kHzの基音」は「?」ですけれど。


■周波数成分を聴覚で確認する

・ノコギリ波の再現性を試聴する
 ということで、視覚的&リクツ的にはおおむね納得いったのですが、実際に再生音として違いは判るのでしょうか。
 試しに、≪WaveGene 1.50≫で生成したまんま、何も加工していないぴっかぴかの1200Hz-3dBのノコギリ波2448,2496,24192の3種をHD700で聞いてみました。ヴァイオリンのつもりで(笑)。

 …大変微妙ですがなんとか判るような?

 では、楽器の最高周波数である4kHzではどうでしょう? 厳しめに4800Hz/-3dBのノコギリ波を3種生成。倍音は9600,14400,19200,24000,28800…です。2448だと4倍音がギリギリということですね。

 …こちらの方が判る気がします。

 奇数倍音しか含まない三角波などでは倍音数は半減しますので、もっと判りやすくなるかも知れません。

 12kHzなどで行えばもっと判るのかも知れませんが、上述の通り、このような試聴音源の周波数は4kHzあたりまででいいことになると思います。

 本件に限ったことではありませんが、試聴にはプラシーボ的な要因も多分に考えられますので「とりあえずやってみたらそう感じた」の域を出るものではありません(なのでまずリクツで考えています)。
 個人的には、「-3dBのノコギリ波」みたいなかなりハッキリした波形でもハッキリ判らないのですから、無数の基音と倍音が混ざり合って複雑奇っ怪な音楽波形におけるハイサンプリングのメリットは(確かにあるでしょうけれど)ほとんど判らないんじゃないかという気がします。ハイレゾ試聴結果に「さらに自信ない」と記している通りです(苦笑)。


 以上、「理想ノコギリ波」なんて自然界には存在しない音でのオハナシです。
 あくまでもひとつの“とある実験”として。


■余談

「ディザリングによる音質向上」なんて技術があります。ざっくり言うと高域のランダムノイズを付加するものですが、そのディザノイズ自体は聞こえるようなレベルではありません。
 「単独」か「波形の成分」かの差に似た事例かも知れません。

・楽器の音色の最高周波数は何ヘルツ?
 ざっくりですが、下はピアノの30Hzくらいとのこと。上は、
   ・肉声(ソプラノ歌手)・・・ 2kHz
   ・ヴァイオリンやピアノなどの楽器・・・4kHz

くらいらしいです。

 基本波形と似ていると言われる楽器は次のようです。
   ・ノコギリ波・・・ヴァイオリン、金管楽器など
   ・三角波・・・フルート、弱く弾いたピアノなど
   ・矩形波・・・クラリネットなど

・20kHz以上の高音と聴覚について、何か学術的な“データ”はないのかと思って検索してみたのですが、ハイレゾに関するこんな博士論文があり、「20kHz以上の高域(の成分が含まれること)を聴き取れた事例」が紹介されています。
http://ir.lib.uec.ac.jp/infolib/user_contents/9000000355/9000000355.pdf

 私は“選ばれし者”じゃないと思う。たぶん(笑)。

・実際にどのくらい倍音が出ているか、ヴァイオリンにつき測定された方がいらっしゃいました。
http://www.sasakivn.com/werkstatt/qa/vnspectram.htm

・楽器の波形の違いを載せている広島大学の資料(音の波と三角関数)です。
http://www.math.sci.hiroshima-u.ac.jp/KOUKAI/text-h18/Sound.pdf

・AudioDesign社社長のBlogにもCDのヴァイオリンソロ部の実際の波形やスペクトルが掲載されていました。
http://audiodesign.co.jp/blog/?p=845


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