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DSDの「MaxPeak」とは何か

15/03/28初稿

 PCM→DSD変換によるUDA-1の“なんちゃってNOS-DAC(というかアナログFIRフィルタとしてのみ)”用法の際、ちょっと気になってるのがこれ。

具体的にはDSDはPCMよりも最大で6dB低くなっている。澤田氏によれば、「DSDはノイズシェーパー(Δ∑変換器)の技術を用いて可聴帯域のダイナミックレンジを稼いでいるため、理論上の100%変調をかけるとノイズが増加してしまう」ため、抑えられているそうだ。
出典:http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/20131029_618702.html

 この記事によると、SACD規格ではΔΣ変調をフルスケールの-6dBまでで使うように規定されているようです。それ以上ではΔΣ変調歪みが出るからだそうで。
 とすると、PC側で行うPCM→DSD変換の際にも、それを避けるため変換前にPCMのピークを絞るべきなのでしょうか?
 そして、そもそも、PCM再生時にDACチップ側で行われるΔΣ変換はフルスケール(100%変調)なのでしょうか?


■6dBの謎

 早速、441Hz-6dBサイン波(2444フォーマット)を以下の方法で再生してアナログキャプチャしレベルを比較したところ、少なくとも数dBも違うようには見えませんでした。

 ・≪foobar2000≫のリアルタイムDSD変換再生
 ・≪JRiverMediaCenter≫のリアルタイムDSD変換再生
 ・PCMそのまま再生(DACチップ内でΔΣ変換している)

 PCMをΔΣ変換する際、ソフトもDACチップも、すべて6dB絞ってる? またはすべて絞ってない?

 DACチップから出てLINE-OUTされるまでのアナログゲインは、PCMモードとDSDモードで同じに設計されているとは限りませんから、これではデジタルドメインで何か起こっているのか解りません。

・デジタル事情を調べる
 まず、“ライターがホントに解って書いてるのかアヤシイ(苦笑)”レポート記事や、メーカの宣伝文句などでこんがらがる前に「技術資料」を紐解きます。

 JPPAという協会の資料だと、「-6dBから+3.1dB上(つまりフルスケールから-2.9dB)が“MaxPeak”」とあります。
http://www.jppanet.or.jp/documents/audio_doc/jppa_chair_of_loudness_vol-1_2010.pdf

 TIのDACチップPCM1738の技術資料には明確に「DSDはPCMより6dB出力レベルが低い」とあります。
http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja008/jaja008.pdf

 以下プロ用(と銘打っている)サイトには、PCMのフルスケールがDSDの50%変調に相当する図があります。
http://www.super-audiocd.com/professional/guide5.php

 これらを見ると、どうもSACDのフルスケール=0dBは確かにΔΣ変調50%(-6dB)のようです。
 「DACチップからはDSDの0dBはPCMの-6dBのレベルで出力される」ということでいいと理解しました(DACチップ内でゲイン弄ったりしていない前提ですが)。
 そして、DSDには「Peak」と、それより3.1dB高い「MaxPeak」というふたつのピークがあるようです。

 PeakがMaxじゃないってどういうこと?

・アナログ事情を試す:準備
 というデジタル事情を踏まえ、DSDとPCMの実際のアナログレベルはどのような関係になっているのか調べてみます。
 冒頭のmarantzインタビュー記事ではいろんなケースがあるようですが…

 まず、便宜上、“データ的な意味”でのゲインを以下のように表記することにします。

・DSD50%変調 = DSD0dB(よって100%変調はDSD6dBとなります)
・PCMフルスケール = PCM0dB

 正式には「SACD0dB」「0dBFS」などと表記するようですが、本稿においてはこの方が解りやすいと思いまして。
 なお、最終的なアナログレベルはアナログ段での増幅率によるのでこの数値と直接関係はありません。
 アナログキャプチャでのレベルは「DSD」や「PCM」を付けずdB表記します。

 次に、ファイルの再生波形をアナログキャプチャで観察する際の設定・条件を示します。

・再生装置・・・UDA-1
・再生ファイル・・・サイン波 1200Hz-0dB/24192 ≪WaveGene 1.50≫で生成
           データ値改変を防ぐためリサンプラは使用しないので、PCM最高精度の192kHzで生成
           *プラス側ピーク値は7FFFFFhになっている(確かに0dB)ことをバイナリエディタで確認した
・キャプチャ環境・・・Z68自作PCにSB-DM-PHD(2496モード)  ≪WaveSpectra 1.50≫にて
            録音レベル79(おおよそPCMフルスケール=キャプチャ時0dBになるように調整した結果)
           *オンボのLINE-INはPCMフルスケールは1dBほど下げないとサチってしまうのでSBにした
・DSD変換・・・≪AudioGate 2.3.2≫  SACDを想定して2.8MHzに変換(DSD64)
・プレーヤ・・・≪foobar2000 1.3.6≫ 各種ヴァージョンは「基音と倍音」記事と同じ
        PCM→DSDリアルタイム変換再生の設定は以下の通り
          ・DSD128(UDA-1仕様内で使おうということで)
          ・TypeB(FP32)
        DSD→PCMリアルタイム変換再生の設定は以下の通り
          ・ASIO Driver Mode・・・当然PCM
          ・PCM Volume・・・0dB
          ・PCM Samplelate・・・88200
          ・DSD2PCM Mode・・・Direct(Double-Precision, 30kHz LF)
           *当設定では30kHzくらいでLPFかかる
            「Multistage」では設定したSamplerateのナイキストでかかる
            「Installable FIR」は何かインストールしてないと使えない

・アナログ事情を試す:結果
 という条件でいろいろ試した結果、UDA-1から出力されるアナログレベルは以下のようになりました。
 「P」はPCM1795にとってPCMモード、「D」はDSDモードです。

P:PCM再生・・・0dB
     そのようにアナログキャプチャレベルを設定したのでアタリマエ。

D:PCM→DSDリアルタム変換再生・・・0dB
     ただし、こちらの方がPCM再生より0.4~0.6dB程度レベルが大きくなる。
     DACチップ内やDACチップ外で、PCMとDSDではDA変換動作が違うため?
     本稿の目的は3dBクラスの差違を見ることなのでとりあえず無視し、実際にはこちらを0dBに調整。

D:≪AudioGate≫でPCM→DSD変換して生成したdsfファイルをDSDネイティブ再生・・・0dB
     ≪foobar2000≫によるリアルタイム変換再生とゲインの扱いは同じと推定。

P:上記dsfをDSD→PCMリアルタイム変換再生・・・激しく音量低下。目視だがおそらく半分=-6dB

P:上記dsfを≪AudioGate≫で再び24192化したファイルをPCM再生・・・0dBに戻った。
     DSD→PCM変換については≪foobar2000≫とゲインの扱いが異なる。

D:≪AudioGate≫でゲイン+3dB設定でdsf化したファイルのDSDネイティブ再生・・・完全にクリップ。
     +3dBで再生している模様。

P:上記dsfをDSD→PCMリアルタイム変換再生・・・-3dBの一見マトモなサイン波が再生される。
     -6dB + 3dB = -3dB になってると推定。
     そして、+3dBというゲインでも「“dsfファイル内では(データとしては)”クリップしていない」ということ。
     これがPCMでは不可能な「MaxPeak」ということではないか?

P:同じく+6dB設定で作ったdsfをDSD→PCMリアルタイム変換再生・・・ピークあたりの波形が崩れた。
     また、DSDファイル内ではフルスケールのハズなのにアナログ再生は0dB近傍まで届かず。
     これが50%以上の変調率だと歪みが出るってことではないか?


 この結果から言えることを以下に記します。


・DSDデータのピークはやはりΔΣ変調100%から-6dB(DSD0dB)が基本であって、DACチップ内でもその通り再生されているようです。

・UDA-1では「PCM0dBとDSD0dBの最終的アナログ出力レベルを揃えている」と言えます。
 「DACチップ内の処理 or 外の処理」「デジタル or アナログ」などの段階や方法は解りませんが(DACチップ内の「Attenuation」機能でPCMを絞ってるような気はしますが…)。

・≪AudioGate≫では、「PCMとDSDの相互変換でDSD0dBとPCM0dBをイコールに置いている」っぽいですね。PCMのフルスケールから+3dBゲインアップしてもDSDデータとしては存在しえるようですが、PCMに戻すとサチってしまいますので。

・≪foobar2000≫のPCM→DSD変換再生でもそうしている(PCMのフルスケールがDSD変換してアナログ0dBで再生されるので)ようですが、DSD→PCM変換においてはDSD6dBをPCM0dBに当てるのをデフォルトに置いているようです。
 つまりDSD0dBはPCM-6dBとして再生されるということですが、イキナリ明らかに音量が小さくなりますので聴感上も矛盾ありません。デフォルトではPCMで表現できない「プラスdB」の世界に入らないようにしているのでしょう。ここは≪AudioGate≫とコンセプト逆ですね。なので、0~+6dBまでゲイン調整可能になってるんですね。
 余談ですが、PS3のSACD再生音量がとっても低かったのはこのリクツかも知れません。


 ということで、少なくとも≪foobar2000≫のPCM→DSD変換においてはPCMフルレンジが変調率50%だと思いますので、“なんちゃってNOS-DAC”用法においてPCMのゲインを気にする必要はなさそうです。
 DSD→PCM変換はちょっと考慮する必要ありそうですね。

・クリップしているのは出力か入力か
 実は、上記実験ではこれが判っていません。
 どういうことかというと、DSD0dB以上のdsfファイル再生(上記でやったのは3dBと6dBだけですが)のキャプチャは、

・録音ボリューム下げてもサチる
・念のためやってみたM/BのオンボLINE-INでもサチる
・UDA-1純正プレーヤソフト再生でもサチる

のですが、これだけだと

「出力がクリップしてる可能性」と
「出力はクリップはしていないがLINE-INが受けられないレベルなので受け側でクリップしている可能性」

両方考えられるということです(厳密には両方ダメな可能性もありますが(苦笑))。

 どっちがクリップしているのか確かめるためには、どちらかで「確実にクリップしていない状態」を作る必要があります。
 そこで、UDA-1の出力をLINE-INが充分受けられるレベルに調整することを考えてみます。世の中にはゲイン調整するアダプタなどもありますね。

  ←-10dB     ←-20dB(商品説明にないけど)

 けど、このためだけに買うのもナンなので、「ボリュームを適量に絞ったUDA-1のヘッドホン出力」をキャプチャすることにしました。

 再生ファイルは、≪WaveGene≫で生成した0dBのwavを≪AudioGate≫でゲイン設定0dBと3dBでdsf化したものです。
 CDやSACDを意識して周波数は44.1kHz系で。ビット深度は波形歪みを見るので24bitで。疑似周波数が発生しないようサンプル数が整数になる1470Hzのサイン波としました。
 キャプチャ環境はハイレゾを聞いて見る記事と同じです。


1.DSD0dB (アナログキャプチャ)

DSD+0dB HP出力波形


2.DSD3dB (アナログキャプチャ)

DSD+3dB HP出力波形


 +3dB化したdsfファイルのDSD再生では、ゲイン弄っていない0dBのdsfファイルよりちゃんと3dB大きいと思われます。つまりDSD3dBの出力はサチっていないということです。
 これで、UDA-1のDSD0dB=PCM0dB以上のアナログレベルでサチっていたのはキャプチャ側だと判りました(ヘッドホン出力は大丈夫だけどLINE-OUTはサチってるなんてことはないでしょう)。
 DSD3dB、0dBを超えたあたりからやや乱れ、頭がワニャワニャしてるのが気になりますね(後述します)。

 キャプチャ側は何故サチったのでしょう? 「UDA-1のLINE-OUTが一般機器より“大きすぎて”キャプチャ側が受けきれなかった」のでしょうか。仕様には2Vとありおそらく2.0Vppのことであり、DSD3.1dBがそのスケールだと思いますので異常とは思えませんけれど、念のため。
 そこで、UDA-1のLINE-OUTをAVアンプであるDSP-Z7のLINE-INに入れ、DSP-Z7のヘッドホン出力を採取してみました。UDA-1の0dB以上の出力が一般的なAV機器の標準より大きすぎるのならDSP-Z7でもサチってしまうハズですが、UDA-1のヘッドホン出力と同じ結果となりました。
 また、+4dB,5dB,6dBのファイル再生しても、ピークはドンツキのまま(サイン波の頭が潰れていく)になるようです。

 以上より、

「UDA-1のアナログLINE-OUTのフルスケールはDSD3.1dBまでであり、PCMのフルスイングより3.1dB大きい」

ということが解りました。
 そして、DSP-Z7(まっとうなAV機器の代表として)のLINE-INはそれを受けられますが、オンボやSB-DM-PHDといったPC用機器(*)のLINE-INの許容レベルは超えてしまうということですね。

*:PC用機器のLINE-INは外部アナログ入力の再生用というよりPCMデジタル録音が主目的でしょうから、LINE-IN=「ADコンバータ入力のフルスケール」を、PCM0dBの一般的アナログフルスケールレベルで規定&固定しているのかも知れません。音源自体のボリューム調整するのが基本、と。


■「DSD変調歪」を可視化する

 マトモなDACユニットならDSD3.1dBまではちゃんと再生できるハズです。
 ですので、上記「DSD3dBサイン波キャプチャ」において頭がウニャムニャしているのはUDA-1のアナログ性能などの問題ではなく“変調歪み”によるものだと思えるのですが、UDA-1の出力限界点に近いということもあり、断定は躊躇します。
 そこで考えました。
 上記のファイルをプラスdBゲインでdsf化した後、-6dB設定で再PCM化することで、「DSD領域でDSD0dB以上=変調率50%以上における変調歪み」をデジタルドメインのスペクトルで見ることができるのではないでしょうか。
 ただ、特にDSD3.1dB以上は“あっちゃダメ”な領域なので≪AudioGate≫の変換保証範囲外である可能性もありますけれど、本稿ではとりあえず無視しています。


0.DSD+0dB-6dB
 とりあえずフツーのハズの0dBを。

DSD+0dB-6dB.png


1.DSD+3dB-6dB

DSD+3dB-6dB.png


2.DSD+4dB-6dB

DSD+4dB-6dB.png

3.DSD+5dB-6dB

DSD+5dB-6dB.png


4.DSD+6dB-6dB

DSD+6dB-6dB.png


 確かに50%~100%領域はフォーマットとしては記録できるが音質はどんどん悪化する領域っぽいですね。
 上記はスペクトルを優先しましたが、波形の方を拡大すると頭がウニャムニャしてるのも確認できます。

 つまり、DSDにおける「Peak」と「MaxPeak」とは、

「突入的なピークを許容するマージンとしてDSD3.1dBまでは許可する(=MaxPeak)けど、なるべくDSD0dBで抑えときなね(=Peak)」

ということのようです。

 DSD音源商品で実際にあるかどうかは知りませんが、これを見ると、規格上許されてるからとMaxPeakまでガンガン突っ込む「DSD版海苔マスタリング」とかあったらヤですね… 元々海苔マスタリングなPCMデータをPCM0dB=DSD3.1dB設定で変換などされたら悲惨なことになりそうです。

 なお、UDA-1のPCMフルスケール再生においてこのような歪みは認められませんから、ΔΣブロックにおける変調歪みについては充分考慮されていると考えていいでしょう。まあ、アタリマエと言えばアタリマエですね(苦笑)。
 なので、少なくともPCM1795においては、「PCM再生の時も内部ΔΣ変換ブロックの変調歪みを考慮して3~6dBくらい下げて入力した方がいいカモ?」といったことはなさそうです。


■MaxPeakの現実

 PCMをDSDに変換することで「なんちゃってNOS-DAC」として使う時、「PCM0dBを敢えてDSD3.1dBなどにゲインアップするのがデフォルトな変換ソフト」は多分ないと思いますので、変調歪みに関して考慮する必要はまずないでしょう。一応、変換ソフトはそのヘンの仕様を確認してから使った方がいいとは思いますが。
 また、通常のPCM再生においても、少なくともPCM1795では充分考慮されているようです。万全を期すなら、DACユニットはそのヘンの仕様を確認してから使った方がいいとは思いますが。

 とりあえずは一安心ですが、今度はハイレゾ配信などの「DSD音源商品」をDSDネイティブ再生する時の事情が気になってきました。当面やらないとは思いますが(笑)。

・「DSDファイルの規格」はどうなっているのか
 ところで、+3.1dBまで許容されているというのはあくまでも「SACD用DSD」規格(ScarletBook AnnexD.3)のハナシです。
 SACDは専用プレーヤでしか再生できませんが、DSDファイルは単体DACユニットなど“ディスクプレーヤ”以外でも再生します。考慮すべき事情が異なりそうですが、「DSDファイルオーディオ」の規格はあるのでしょうか。

 DSD音源商品はSACD用を流用するケースが多いような気がしますので、事実上ScarletBook規格に準拠しちゃってると考えた方がよい気がします。また、後述するweb記事などを見ても、おそらくDSDファイル制作は“SACD用でなくても”ScarletBookの通り+3.1dBをMaxPeakにしてるのだと推察します。
 もし、DSD“ファイル”規格があって、フルスケールはDSD0dBまでという規定があったりするなら、ちゃんと“DSDドメインで”DSD0dBをピークにゲイン調整してから売ってるのでしょうか?
 たぶんそんなことしてないと思います(笑)。

 ですので、上記の通り例えばUDA-1のLINE-OUTを入れるとクリップしてしまうLINE-IN機器もありえます。
 その場合は、DSDドメインでのデジタルボリュームは一般的にはムリなので、DSDネイティブ再生しようとするとユーザ側ではどうしようもないということになります。まあ、問題になるのはPC関連LINE-INだけかも知れませんけれど。
 それより、例えば≪AudioGate≫がDSD0dBをPCM0dBに一致させている(ゲイン設定しないでPCM変換するとDSDの0~3.1dB領域はクリップする)方が問題かも? ≪AudioGate≫はゲイン設定できますから気をつければよいハナシではありますが、当該機能の設定はソフトそれぞれでしょうから、使う時はソフトごとに忘れず気をつける必要がありますね。
 まあ、そもそもあんまり当該機能の出番はないかもですが(苦笑)。
 「いつかDSDネイティブ再生できるDAC買うつもり」でDSDファイル買って、PCM変換して聴くような場合くらい?

・製作側はどうしているか
 次のphileweb記事によると、ピークはDSD0dBではなくDSD3.1dBでAD変換しているようです。

レベル調整時には、SADiE上のメーターでチェックを行い、マックスピークが+3.1dBを超えないようチェックする。というのは、SACDとして販売し再生する場合は、SACDプレーヤー側に3.1dB分レベルを下げて再生する機能が入っていたが、PCで再生される配信音源の場合では、PC側にそういった機能がないため歪みの原因になってしまうのだという。
出典:http://www.phileweb.com/interview/article/201402/26/220.html

*:主旨からは外れますが疑問点を。
 文脈では「+3.1dBを超えないようにすることでPC再生で歪みを発生させないようにしている」ように読めますが、ScarletBookに準ずるならそこで抑えるのは当たり前ですよね。
 「SACDプレーヤではDSD3.1dBをアナログ出力の最大振幅にしていたが、PCではしてない=PCM0dBをフルレンジとしているので“もともと”+3.1dBレンジオーバーするところにさらにオーバーすると“さらに”歪みの原因になる」と読解すればいいのかな?

 OTOTOYにも以下のような音源説明があります。

また、DSDのネイティヴ再生を念頭に置いて、リマスタリングしていますので、以下のことにお気をつけ下さい。DSDにはPCMよりもヘッドルームがあります。PCMの0dbの上に、3.1dbほど余裕があるのです。今回のDSDリマスターの中には、レベルが0dbを越えて、その3.1dbのヘッドルームに達しているものもあります。AudioGateでこうしたDSDのファイルをwavファイルなどに変換すると、ピーク時にクリップして、歪んでしまいます。クリップしないように変換したい場合は、AudioGateの変換時のゲイン設定を-3dbに下げれば、避けることができます。
出典:http://ototoy.jp/feature/20130402

 明確に+3.1dBまで使ってると言ってます。

 一方、e-onkyoの2L無料サンプルDSD64を≪AudioGate≫でPCMに変換したファイルの最大音量は0dB未満でした。
 2LではDXD(352.8kHz/24bit)のオリジナルソースからいろんなフォーマットに変換して商品化しているよう(*)ですので、DSDデータでもプラスdBゲインがないのでしょうね。

*:http://www.2l.no/hires/
  http://ascii.jp/elem/000/000/947/947845/index-4.html

 このように、DSDデータでもSACD用ではないマスタリングもあるでしょう。

・データの中身と再生機器と
 e-onkyoは次のように言っています。

DSDのほうが圧倒的に小さいのが波形からも確認できます。つまり、CDとDSDを聴き比べるときは、アンプのボリューム位置が同じではいけません。DSDを再生するとき、まずはCDと同じ音量感で聞こえるまで、グイッとボリュームをアップさせてください。音量さえ揃えれば、圧倒的なDSDサウンドの本質に触れることができるでしょう。
出典:http://www.e-onkyo.com/news/115/

 データの話としては大正解でしょう。が、実際の再生ではDSDとPCMのアナログゲインは再生装置によって違うので、「圧倒的に小さいとは限らない」ハズです。
 例えば、アナログゲインとして「DSD0dBをPCM0dBに合わせる」プレーヤと、「DSD3.1dBをPCM0dBに合わせる」プレーヤがあるとすると、前者は「SACDの方がCDよりピークが3.1dB大きい」となり、後者だと「(MaxPeakをPCMのPeakと見るなら)同じ」となります。
 さらに、本稿冒頭記事の「DSDが3dB低いまま出す」というmarantzコンセプトは、DSD6dB=PCM0dB(MaxPeakであるDSD3.1dBでもPCM0dBより約3dB低い)と理解できます。DSD6dBを変調率100%=DSD0dBを50%変調とするDACチップ処理そのまま、ということでしょう。この場合は「DSDの方が約3dB小さい」となりますね。一方、見てきた通りUDA-1ではDSD0dB=PCM0dBですので、「DSDの方が最大値は約3dB大きい」となります。
 データの事情は変わりませんが、それをアナログ段で(*)どう増幅するかによって最終出力は「DSD(SACD)の方が3dB大きい~3dB小さい」まで変わっちゃうワケです。実に6dBもの違いがあることに。
 DACユニット商品のコンセプトは業界内で統一されてはいないようですので、ここの事情を踏まえて評しないとこんがらがりますよね。

*:前述の通り、厳密に言えばDACチップ内のデジタル処理でPCMを下げている場合もあり得ます。


 以上、

「DSDファイル商品は結果的にScarletBookに準じて製作されているものがあり、最大音量がDSD3.1dBになっている楽曲がある」

「PCMから変換されているものもあるので、この場合の最大音量はDSD0dB、つまりPCMと同じ」

「DSD→PCM変換する時は要注意(特にファイル化する場合)」

「アナログ化した音量としてDSDの方が大きいとか小さいとかってハナシは、アナログ化機器の設計に依存するので一般論にならない」

「DSDネイティブ再生アナログ出力レベルがPCM0dBより最大3.1dB大きくなるDACユニットもあるので、受け側が許容できるか要チェック」


ということですね。


■備忘録

・変調率50%以上だと歪むワケ
 例えば入力フルスケールが10のΔΣ変調器があったとして。
 レベル4のサンプルは「0」判定となり、0との差分4が次のサンプルにフィードバックされます。そのサンプルのレベルが7だったら足して11、オーバーフローします。サンプル値の上限が5なら、10を超えることはありません。
 原理はそういうことでいいのかな。単純すぎ?

・出力レベルと入力感度
 出力電圧2Vを入力感度200mVで受ける組合せの場合、入力側の有意な増幅(というか減衰)最大ゲインは
20 x log10(0.2/2) で計算できる。このゲインで減衰させた時入力された2Vが内部で200mVになる。
 入力感度とは、その値がその後段回路のフルスケール(パワーアンプなら出力最大)になる値という意味。
 なので、組合せで決定される最大ゲイン以上に上げても入力後に歪むだけで意味がない。

 Vrmsは平均値(振幅の半分の)、Vppはピークトゥピーク(全振幅)。なので実際には同じ出力値でもVrms表記は少なくともVpp表記の半分以下になる。
http://www.g200kg.com/jp/docs/dic/rms.html

・オーサリング関連
http://surroundterakoya.blogspot.jp/2009_07_01_archive.html

・JPPA
 「日本ポストプロダクション協会」。
 「ポストプロダクション」とは、テレビ番組などのコンテンツ制作を技術面からサポートする業務とのこと。
http://www.jppanet.or.jp/annai/annai_top.html


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