真央VSヨナVS新採点法!その光と影

10/05/09初稿

 数多の憶測をよんでいるフィギュアスケート新採点法。私も自分で納得するためにいろいろと調べていました。根拠レスのweb情報などに踊らされるのはイヤなので…
 煩悩を振り払うための調査ですが、基本的に標題の通りの視点で行っています。ので、すべての採点結果の統計的な結論、といったことにはなっていません。あくまでも自分の納得のため、ということでご容赦ください。
 もうひとつ、どうしても視点が「浅田真央VSキムヨナVS新採点法」になることもご容赦ください(タイトル通りです)。

 さて、まず最初に、調査してたどりついた結論をひとつ。

ちまたで「ルール」と言われている内容には、実は
「ガイドライン」と「ルール」
の2種類が存在する。


 以下、これを前提に記載させていただきます。


■そもそも問題点(疑念点?)

 この認識をまずはハッキリさせる必要がありましょう。
 ネット上の議論などでは、以下の別要素がこんがらがっているように思えます。

1.新採点法のPCSやGOE基準などの「ガイドライン」の合理性について
  …GOEやPCS、回転不足判定の基準値などへの疑問です。
   これって、実は「守らねばならないルール」ではなく「目安としてのガイドライン」なんですよ、きっと。
   ISUのpdf資料内部を検索してみてください。
   テクニカルパネル用資料も「ハンドブック」であって「ルールブック」じゃないですもん。
   そもそも、GOEプラス採点項のタイトルはそのまんま「Guidelines for marking +GOE」ですし、
  GOEをつけるために満たすべき項目数も明確に「裁量による(原文"at the discretion of each Judge")」
  となっている(*)など、いくつか「裁量」という文言を見ることができます。

2.新採点法の配点やジャンプ回数制限などの「ルール」の合理性について
  …標題のような規定についてこそが「ルール」なのです、きっと。例えばいわゆる“ザヤックルール”など。

3.新採点法の審判匿名性などの「運用システム」の妥当性について
  …審判数、匿名性、ランダム抽出、といった運用規定についてです。
   審判の技量や採点結果のバラツキへの疑問も含まれるかな。

4.新採点法の現実運営上の「正当性」について
  …これは上記3項目とはちょっと趣を異にします。
   いわゆる「特定の選手に甘い・辛い」や、ルール改定に「特定の選手や国に対する思惑」が
  絡んでいるのではないかという疑惑のことです。
   最終的にはロジックでは語れません。

*:09-10シーズンに適用されたハズのISU文書より
To establish the starting GOE Judges must take into consideration the bullets for each element. It is at the discretion of each Judge to decide on the number of bullets for any upgrade, but general recommendations are as follows:
出典:Communication No.1557(09/04/15発行)

 以下、これらを順番に見ていきたいと思います。


■1-1.ガイドラインの合理性について:GOE編

 現行ガイドラインでは、見た目と得点の乖離が激しすぎるのではないかと感じる例、ISU文書に載ってる採点基準と違うんじゃないかという、いわゆる“不可解な採点”を少々。

・ヨナ選手お手つき加点(ガイドライン的には○)
 GPアメリカ大会2008FSにて、2A着氷後お手つき(片手)していますが、GOE加点もらっています。ビデオで確認しました。GOEガイドラインでは「プラス要素を考えてから、マイナス要素を減じてGOE結果とする」なので矛盾はありませんが、観戦している側としては「失敗ジャンプ」に見えるので、ちょっと納得しにくい結果です。
 審判国籍はカナダ・USA・フィンランド・イタリア・ドイツ・中国・日本・トルコ・韓国・ベルギー。

・ヨナ選手すっぽ抜け加点(ガイドライン的には○)
 世界選手権2008FSにて、3Lzが抜けて1Lzになっちゃったジャンプに加点が付いています。ビデオで確認しました。確かに大変キレイな1Lzでしたが(笑)、これも「3Lzを失敗」しているのですから、それに加点付くっていうのはちょっと納得しにくい結果です。
 審判国籍はResultではISU付け(噂のイ・ジヒ氏は入ってます)。

・ヨナ選手「e(エッジエラー)」加点してる審判(ガイドライン的にも×)
 GP中国大会2008SPの3F+3Tにe判定が出ています。
 08/06/30付けで発行されたISU Communication 1504には、以下のような記載があります。これって08-09シーズンに適用される内容ですよね?

1. 重度の間違った踏み切りエッジ(間違ったエッジが長い、正しいエッジが全く無い)の場合、テクニカル・パネルは“e”(edge:エッジ)記号を用いる; この場合、ジャッジはGOE で-1から-3の減点を行い、GOEは必ずマイナスでなければならない。

 が、GOEに0を付けた審判が一人、+1を付けた審判が一人。最終GOEはマイナス。あの~、マイナスしてない人がいるんですけど…
 この時の演技審判9名(ダミー含む)の国籍は、フィンランド・ウズベキスタン・スイス・ロシア・USA・中国・カナダ・日本・韓国
 その他、08-09、09-10シーズンにおいては、

 GP中国大会2008FS:WAGNER(USA)選手の3Lz+2Loの「e」にGOE0の審判が一人。
  審判国籍はスイス・ロシア・韓国・ウズベキスタン・USA・カナダ・フィンランド・日本・中国

 GPアメリカ大会2009SP:SEBESTYEN(ハンガリー)選手の3Fの「e」にGOE0の審判が一人。
  審判国籍はドイツ・エストニア・日本・USA・フランス・韓国・グルジア・フィンランド・ハンガリー

 四大陸選手権2010FS:GILLES(USA)選手の3Fの「e」にGOE0の審判が一人。
  審判国籍はResultではISU付け。

 世界選手権2010SP:SEBESTYEN(ハンガリー)選手の3Fの「e」にGOE1の審判が一人。
  審判国籍はResultではISU付け。

 …ヒューマンエラーですかねぇ。ガイドラインだからいいのか!(苦笑)

・ヨナ選手「!(アテンション)」加点(ガイドライン的には○)
 これはもうたくさんあります。というかすいません、ちゃんと調べたら「!で加点されてない例がない」(苦笑)。
 上記の1504からの抜粋です。

2.間違った踏み切りエッジが短い、あるいは、間違った踏み切りエッジがそれほど明らかではない場合、テクニカル・パネルは“!”(attention: 注意) 記号を用いる; この場合、GOEの決定は、各ジャッジの裁量による。

 こちらは最終GOEは必ずマイナスでなくてもいいようです。その調子で「e」でも加点しちゃった審判がいたんですかね(笑)。ガイドラインだからいいのか!(苦笑)
 ちなみに08-09、09-10シーズンのResultチェックしたところ、「!」付きながら最終GOEがプラスのジャンプを跳んだ選手は唯一ヨナだけです。

・真央選手「ダウングレード加点」してる審判(ガイドライン的にも×)
 GPカナダ大会2007FSにて、3F+3Lo<にGOE0が2名、GOE+1が1名。最終GOEはマイナス。
 審判国籍はクロアチア、日本、イタリア、USA、ロシア、カナダ、ドイツ、ベルギー、オーストラリア、フィンランド。
 世界選手権2008FSにて、3F+3Lo<にGOE0が1名。
 ISU Communication1445(07/05/07発行)のGOEガイドラインによるとコンボの「1または両ジャンプがDG=-1to-3,-GOE」とあります。おそらく「GOEのマイナス要素として-1~-3。かつ、最終GOEはマイナスであること」という意味かと思います。とすると、0や+1はガイド上はおかしい。ガイドラインだからいいのか!(苦笑)

 GP日本大会2008FSにて、3F+3Lo<にGOE0が1名。
 ISU Communication1494(08/04/28発行)によると、コンボでは「1ジャンプがDG=-1to-2,-GOE」とあります。やっぱり最終GOEがマイナスにならないのはおかしい。
 審判国籍はウズベキスタン、韓国、中国、フィンランド、ドイツ、カナダ、ロシア、ベラルーシ、USA、日本

 ところで、ヨナにもありますよ、DGのGOE0。
 GP中国大会2008SPにて、3Lz<にGOE0が1名。この時が唯一ですけど。
 審判国籍はフィンランド、ウズベキスタン、スイス、ロシア、USA、中国、カナダ、日本、韓国
 この時はFSのミキティ3T+3Lo<、3F<にもGOE0ってあるし、というか、過去のResuiltざっと見たところGOE0は山ほど。
 ちなみに、08-09シーズンに適用されるであろう1494のシングルジャンプGOEガイドは「DG=-1to-3,-GOE」です。

 「-1to-3,-GOE」といった表記の意味ですが、08-09シーズンにてエッジエラーについて「-1から-3の減点を行い、GOEは必ずマイナス(原文"and must be negative")」という記載があり、GOEガイドラインでは「間違ったエッジでの踏み切り(長さによる)=-1to-3,-GOE」とあることから、上記のような理解しています。
 数学的には「negative」は「0より小さい」であって「0以下」ではないので「0は含まない」ハズですが、ISU用語ではゼロを含むのかな?(苦笑)
 というか、「必ず~ねばらなない」という記述の「ガイドライン」が存在することが矛盾。

 GOE採点は「ガイドライン」であって「ルール」じゃないから審判の裁量でガイドラインと異なる採点してもよかったんですね! やっとスッキリしました!(ウソ)


■1-2.ガイドラインの合理性について:PCS編

 といってもあんまり語ることなくて、どんなに判断基準(ガイド)を設けたとしても、所詮は主観評価ってことですよね。
 あえて言うなら、「スケーティングスキル」「トランジション」なんかはある程度客観的評価できるのではと思いますが、「音楽解釈」なんていう、それが難しいものが混在しているのが問題では。

 14/02/01追記(別記事から移動):ちなみに、荒川静香さんの著書「誰も語らなかった 知って感じるフィギュアスケート観戦術」に以下のような記述があります。

・新採点法について
P.20「それまで6点満点で採点されてきたフィギュアスケートの採点を、もっと客観的で、わかりやすいものにしよう、という意図で国際スケート連盟(ISU)によって開発されたのです」

・旧採点法について
P.21「この方式は、ジャッジ個人の主観と裁量が大きく反映される採点方式だったと言えます」

・PCSについて
P.48「この芸術性の採点基準に関しては、以前の6点満点が10点満点に変わっただけ、という気もするのです(笑)」

 つまり「新採点法は客観性を高める意図で開発されたが、PCSは主観や裁量が大きいままだと感じる」ということですよね。
 「PCSは主観」という理解について、荒川さんのお墨付き貰っちゃいました。良書です(笑)。




■1-3.ガイドラインの合理性について:回転不足編

 世界選手権2010のFSで真央の3A+2TがDG、ヨナの3S(転倒)が認定されました。
 回転不足は1/4以上回っていない場合、なのですが、回転開始と終了のポジションの規定がどう探しても出てきません(ISUの資料にも見あたらない)。
 結局、「テクニカルパネルハンドブック09-10」や各種ネット上の情報を総合し、以下のような定義ではないかと推察するに到りました。あくまでも私の勝手な解釈として、ですが。

・基準ライン・・・ジャンプに入る直前の進行方向の延長線上で離氷・着氷が行われること。
・回転開始の定義・・・厳密にはなし。テクニカルパネルの判断による。
           ただし、離氷するまでにアクセル以外なら前向きまで回ってしまうもの、
           アクセルなら後ろ向きまで回ってしまうものは“ごまかしジャンプ”としてDG対象。
・回転終了の定義・・・着氷時のブレードおよび体の向き。ブレードのどこが着氷したかは明確な定義なし。

 要するに、流れに乗ってキレイに跳んで降りるのが基本、ということらしい。
 DG判定は、「回転終了時はスロー再生」「踏み切り時の確認はスローではなく通常再生」ということからしても主に終了時のポジションで見ていると思われます。きっと「総合的に1/4以下になっているか」なのだと推察します。
 回転開始が離氷ではないのはアクセルに限らずエッジ系ジャンプ判定結果を見れば明白だと思いますが、あまりにも離氷前に回るのはダメらしい。よくあるのがトウループで半分回ってから離氷する通称「トウアクセル」だそうです。
 だとすると、世界選手権2010FSのヨナの3S、「サルコウアクセル」になってないか???
 回転開始時を甘く見てる(見逃してる)気がしちゃうな~

 13/12/30追記:今更ですが、11/11/11の日経コラム(*)にて平松さんの「随分前から主張しているけれど、踏み切る前の回転不足がまだ、きちんとチェックされていない」というご意見が紹介されています。

*:http://www.nikkei.com/article/DGXZZO36388570Q1A111C1000000/?df=4

 明確な定義がない(または開示していない)のに1/4とかハイビジョンスロー再生(*)で確認とか厳格なところもある。そういうレベルの不揃いさが疑惑を生む源な気がします。
 また、テクニカルパネルによるパラツキ(甘い辛い)が結構あるように見えて仕方ないのですが、「客観的定義はなくテクニカルパネルに任されている」ゆえに「バラツキはある」と判断せざるを得ないようです。
 つまり野球の審判のストライクゾーンなんかと同じだったということで。意外なんですけど、意外とそうだったりするんだね。

*:情報源
2008年秋から、テクニカルパネルがジャンプの回転数を見るのに、ハイビジョンのスーパースローモーションで、しかもズームアップでチェックできることになった。
出典:田村明子 氏著「パーフェクトプログラム」 P.49



 13/11/22追記:アルトゥニアンコーチが回転不足判定について語ったロシアweb記事を訳してくださったBlog(*)がありました。
 『単にジャッジはそれを時々「見つける」が、時にはそうではない』だそうです(言ってくれるねラファエル(爆))。

*:http://moscowm.blog61.fc2.com/blog-entry-194.html

 14/02/01追記:Number846の八木沼純子さんによるジャンプ採点解説(P.49)に「1/4未満の場合ルール上は回ったことになるが“回転不足と判断されることもある”」って記述がありました。ルール上はOKでもダメなことがあるっていうのも不思議な表現ですが、つまり「DGやURの判定はテクニカルパネルの裁量」ということですよね。

 14/12/31追記:こづが…全日本2014女子の回転不足判定の厳しさについてコメント出しました。
 選手も「統一されてない」って感じてるようですね(ISU大会じゃありませんけれど)。

ジャッジやスペシャリストによって、判定が全然違ってくるようなことは考え直してもらえると……。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141229-00000106-spnavi-spo

 「誰かが言わないと変わらないと思いますし、それが「よし」とされる世界ではよくないと思います。」
 こづ…泣ける。


 本Blogでは敢えて技術審判3名のことを「テクニカルパネル」と書いています。個人ではなく3名で構成されていることは理解しています。


■2.ルールの合理性について

・男女で基礎点やGOEが同じってヘンじゃないですか? 一方では演技時間は違うし要素規定も違うしPCSの倍率が違うのに。男と女では身体能力は違うでしょうに。
 素人考えでもなさそうです。

最後のラウンドテーブルディスカッションで、他のジャッジたちに「トリプルアクセルは、男性には簡単かもしれませんが、女性には非常に難しいエレメンツです。もっとベースバリューを考えた方が良いのではないですか」と話しました。~中略~ 技術委員のレカニックさんは、私の発言を受けて「次のISU総会では、この件について提案されると思います」おっしゃっていました。今は男子も女子も同じジャンプの基礎点ですが、女子にとってのトリプルアクセルや4回転は、男子と同じではありません。身体能力も違います。基礎点を分ける必要もあると思います。
出典:「フィギュアスケートDays Vol.12」 P.43 藤森美恵子さん「バンクーバー五輪総評」



--4回転、また女子の3アクセルの基礎点が低すぎるという意見については、どう思いますか?
天野 人間に可能な滞空時間、体力の限界を考えると、4回転というのは本当に難しい特殊なジャンプです。今のルールだと4トゥループは9.80ですが、フリーの後半で3ルッツ+2トゥループ+2ループを跳ぶと9.68と、ほとんど変わらないポイントを稼ぐことができます。フィギュアスケートでは最初の1分で心拍数が200近くに上がるといわれていて、そんな中で後半に3回転を跳ぶのは本当に大変なことではあります。それでもやはり、4回転の難しさとは比べることができません。ですから4回転と、女子の3アクセルはもっと高い基礎点になってもいいのではないかと思います。

出典:「ワールド・フィギュアスケート No.43」 P.40 世界選手権2010天野真さんインタビュー



・コンビジャンプの基礎点が単純足し算ってヘンじゃないですか? 単発よりムズカシイと思いますけど…

・コンビジャンプで難度の高いジャンプのGOEレベルを全体に適用ってどういうこと?
 例えばセカンドのダブルの出来にもファーストのトリプルのGOEが適用されることに。3Lz+3Tと3Lz+2Tも同じGOEレベルに…プラス面もマイナス面もおかしいです。“裁量”で調整してるってことでしょうか。

・コンビジャンプは親子型より兄弟型がよいって言われても…組み合わせるジャンプによって事情はだいぶ違うんじゃないでしょうか? これは「ルール」じゃないかも知れませんが。


■3.運用システムの妥当性について

・演技審判の匿名制
 八百長疑惑以来、ある審判が「八百長な得点をちゃんと出した」ことを判らなくすることで八百長を防ぐために匿名にしている、という理由なのだと思っていました。
 これは、匿名ではないテクニカルパネルの判断が得点に大きな影響力を持っている現システム上、演技審判だけ匿名にしても意味はないと思います(テクニカルパネルが八百長しているという意味ではありません。念のため)。
 一方、「所属している自国の連盟への配慮をしなくてよくするため」という説も見ました。というかこちらの方が公式(?)な理由でしょうか。連盟やマスコミに自分の判定をチェックされないようにすることで“自分の自由な価値観で判定できるように”という意味のようですが、日本人的感覚ではイマイチよく解りませんね。しかし、後述するように「ロビー活動」は確かにありそうですので、その意味はあるのかも知れません。

 ひとつ書いておきたいのは、そもそもそういうったプレッシャーが有形無形問わず存在することをISUが肯定しているゆえに匿名制は成立しているワケですが、匿名にしてもそれらは無くなりませんから、匿名によって「連盟やマスコミを気にせず判定できる」システムはそれら“プレッシャー元”にとっては悪用も可能である、ということです。正当性を保証する仕組みとされるテクニカルパネル会話の傍聴やジャッジの監査などもISUの内部で閉じています。もし“ISU内部”にプレッシャーがあるとするなら、逆に助長はできてもそれを排除できるものではありません。
 つまりISUへの信頼でのみ成立するシステムということです。であればISUは可能な限りの透明性確保維持に努める義務があるでしょう。それを果たしているでしょうか?

・採点の最高点最低点カット
 イマイチ情報に矛盾があるので、ISUのジャッジシステムサマリーページ:10/05/08現在(*)からの抜粋を記します。

*:http://www.isu.org/vsite/vcontent/page/custom/0,8510,4844-152094-169310-31825-132302-custom-item,00.html

There will be a panel of 9 Judges, of whom 7 are drawn at random. The scores of these seven Judges will form the result. Out of these seven scores, the highest and lowest score of each element or performance are ignored and the average will be taken from the remainder, generating the trimmed mean (average score).

 9名の中から7名がランダム抽出され、最高最低点をカットした5採点を平均、とあります。
 最高最低カットは統計手法としてよく見るものですので問題はないと思いますが、これで意図的な得点操作を根絶できるワケではありません。自分がトンデモに高い点低い点を付けることで、そうしなかった時にカットされていた高い点低い点を残すことができるからです。
 これを防止するためには、匿名制廃止が有効ではないでしょうか。トンデモ点を出したのが誰だかバレてしまいますので。
 個人的には、例えばGOEで-1から+2までバラけるようなばらつきは問題だと思いますので、判断の精度アップのためにも誰がどんな採点したのかは明示した方がいいのではと思います。

 15/11/07追記:演技審判9名の席はロングサイドにかなり広がっていますので、同じ技・動きも見る角度はかなり違います。GOEやPCSのバラツキはそこから産まれるのかも知れませんが、もしそうだとするとそれは意図的なのでしょうか…

・ランダム抽出
 特に問題ないかと思いますが…
 敢えて言うなら「意図的なカット」という不正を可能にする、とは言えるかも知れませんが。


■4-1.正当性について:いかがわしい事例編

・ネームバリュー
 田村明子氏著「パーフェクトプログラム」P.208にあるように、その選手の実績(ネームバリュー)も採点には明かに影響するらしい。
 また、あまり「それらしくない」得点を出すと審判としてのISU監査にひっかかるといった事情があるため、(ネームバリューに応じて)無難な点を出す傾向もあるらしい。
 荒川静香さんも実体験から「名前で得点」はあるのではと語ってらっしゃいます(*)。

*:http://www.ninomiyasports.com/sc/modules/bulletin/article.php?storyid=2564

 バンクーバーオリンピックで9点台を出したヨナのPCS。
 ヨレヨレだったトリノでも8点前後を出して真央をぶっちぎったヨナのPCS。
 四大陸選手権2010SPでスピンステップ系すべてレベル4を獲得しながら6点前半だった鈴木明子のPCS(TESとPCSは連動していませんけれど)。
 おそらく事実であろうと思います(感じます)。
 新採点法は「絶対評価」、6点法は「相対評価」と言いますが、上記のこともあり、個人的感想としては、絶対、絶対評価にはなっていませんね、きっと。
 さらに言うと、そもそも「実績・ネームバリューが自体が正当か?」という懸念もあり…もう泥沼(笑)。

 以下14/12/31追記:12/19にBS朝日で放送された「グランプリシリーズ総集編」で、岡部さんが振り返り解説なさっています。その中の、無良選手カナダ大会FS演技終了後のコメントです。

非常に失敗がなくクリーンなプログラムを滑ってきました。やはりひとつひとつの試合でこういうクリーンな演技をしていくというのは非常に大切なことでありまして、それを得てどんどん評価も高くなってきますね。

 また、前出の荒川さん著書にもそういった指摘があります。

その選手にはできる能力があるというこを、ある程度、普段からジャッジに知っておいてもらう必要があるのです。半信半疑のものに対して、ジャッジは決して高い演技構成点を与えてはくれません。
出典:「誰も語らなかった 知って感じるフィギュアスケート観戦術」 P.50

 しかし、明らかにそうでないこともありますのでやっぱり泥沼です。例えば、それまでクリーンな演技を積み重ねていたとは言い難い(実績的には絶対“半信半疑”なハズ)アデリナですが、ソチでの素晴らしい演技にはちゃんと素晴らしい評価が出ました。

 16/04/05追記:中庭氏が世界選手権2016総括記事で以下のように語っていました。

 また浅田選手以外の選手が課題としている演技構成点についても、表現力をどう高めていくかの努力が必要になります。ジャッジが主観で採点する部分なので、それぞれの選手にレッテルのようなものが存在することも事実ですが、宮原選手や、本郷選手らは、今シーズンの経験値を踏まえ伸ばすことは可能だと考えています。
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160403-00000003-wordleafs-spo&p=2

 レッテルはあるとのこと。

・GOE相対評価
 本項16/04/05追記。
 中庭氏は同じ記事で以下のような発言もしています。

 一方、宮原さんの演技は安定していますが、ジャッジは大会ごとに相対的に出来栄え点を評価する傾向がありますので、どうしてもメドベデワ選手らのジャンプと比較されると加点をもらいにくく、~(以下略)
出典:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160403-00000003-wordleafs-spo&p=1

 GOEは絶対値じゃないそうです。

・インマン氏メール事件
 バンクーバーオリンピック前にISU審判のジョセフ・インマン氏がプルシェンコのトランシジョンについて「本人があまり考慮していないと認めているのをどう採点すべきか?」といったメールを審判仲間に送ったというもの(*)。先の著書にも詳しい。

*:http://number.bunshun.jp/articles/-/13503

 審判の講師を務めるほどの人が採点の方向性を示唆するような言動をするっていうのは、日本人的感覚では努めてやらないようにするもの、かと思います。
 そもそも、本人の弁と採点は関係ないでしょうに。逆に本人が「やってる」って言ったって考慮しないでしょ?

・イ・ジヒ氏発言
 韓国人審判イ・ジヒ氏(Ms. Chihee RHEE)の発言として「中央日報」「東亜日報」「SportsSeoul(スポーツソウル?)」に掲載された内容が「キムヨナ選手に有利なように審判する」「特別扱いする」と取られかねないものであったこと。

 東亜日報09/10/19編:「キムヨナに限って加点を十分に活用」
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=070000&biid=2009101974738
 中央日報09/11/08編:「審判たちが称賛している」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=122459&servcode=600§code=600
 中央日報10/02/24編:「次から高いレベルを受ける」
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=126535&servcode=600§code=670
 SportsSeoul10/02/25編:「キムヨナが不利益を受けないように努力する」
http://www.sportsseoul.com/news2/sports/sports/2010/0225/20100225101030500000000_8004125250.html

 これは、翻訳ニュアンスの問題、および、いわゆる“スポーツ新聞”と推定される媒体の記事の信憑性という問題があり、鵜呑みにはできないと思っています(念のためですが東亜日報と中央日報はスポーツ新聞ではありません。日本で言うなら読売朝日毎日などの立場にあるハズの“ジャーナリズム新聞”です)。
 が、かなりそれっぽい傾向の内容であることは事実かと(苦笑)。
 少なくとも、日本人審判なら発言しない内容かな。

 余談ですが、中央日報09/04/21の記事「ISU、浅田真央を救済?(*1)」を読むと、当紙の記事は信頼性・公平性低く意図的であると言わざるを得ないのではないかと思いました。
 ダウングレード判定の緩和は別に真央だけ有利になるものではありません。他の選手にもあまねく有利です。例えば「なんちゃって3A+GOE」が可能になる選手にも有利、と見ることもできましょう。
 次にロングエッジ減点強化について「それもキム・ヨナが主に使うフリップとルッツジャンプだけに適用した」というくだり、意味不明です。ロングエッジ対象はエッジを使い分けるフリップとルッツだけなのは当たり前かと… そもそも、ルッツ苦手な真央にこそ不利な改定では?(苦笑)
 また、「平松理事は昨季ISUグランプリ第3戦のショートプログラムでキム・ヨナのフリップジャンプに‘ロングエッジ’判定をしている」という記述がありますが、これは上記の通りGP中国大会2008SP(*2)の3F+3Tへの「e」判定のことと思われます(何でシーズン年度と大会名で記さないのか少々疑問ですが)。が、このときのテクニカルパネルに平松氏は入っていません(*3)。どういう意味? ジャッジングシステム素人には不明です。

*1:http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=114369
*2:http://www.isuresults.com/results/gpchn08/gpchn08_Ladies_SP_Scores.pdf
*3:http://www.isuresults.com/results/gpchn08/SEG003OF.HTM

 2007年の中国大会では平松さんジャッジなさってますしヨナも出場していますがエラー付いてないし(苦笑)。

 ちなみに、中央日報さんって韓国最大誌なんですよね? 確たる証拠もないのに「みえざる手」呼ばわりするジャーナリズムって…

・審判研修ビデオ
 07/11/06の毎日新聞、web記事としては07/11/05に掲載。最近ではAERA10/04/12号にも同種の記事が載っています。
 実際に図書館で記事をコピーして来ましたが(ご関心ある方は地元の図書館でカンタンに入手可能だと思いますので是非どうぞ)、「ジャンプの模範演技にはキムヨナばかり出ていた」とはありますが、「悪い例はどうなっていたか」「ジャンプ以外はどうなのか」などは記事からは判らず、ビデオの正確な内容は知る術を持ちません。
 ただ、現役選手を「良い例・悪い例」に使うのはおかしいのではないかとずっと思っていました。が、それも「権利関係でISU支配下選手=現役選手を使わざるを得ない」という見方を元選手の方のBlogで拝見して、その可能性もあるなぁと思いました。
 ただ、「プルシェンコが悪い例として出ていた」という話もあり、だとすると07年ってたしか引退してたハズじゃないのか? と思ったり…
 と、最初書いたのですが、「プルシェンコは休養していただけで引退はしてなかった」というご指摘をいただきました。また、バンクーバー直前のUSA Todayに当ビデオの記事(*)があるそうです(ご指摘くださった方、ありがとうございました)。
 いずれにしろ、真実はいち素人には永遠に闇の中です。

*:これあたりかな? http://www.usatoday.com/sports/olympics/vancouver/figureskating/2010-02-12-plushenko-judges_N.htm


■4-2.正当性について:ルール(ガイドライン)改定の有利不利編

 これは別エントリーで考えたいと思います。
 ここで結論だけ書きますと、「結果的に特定選手に有利不利はある。しかし、その結果が意図的に導かれたものか否かは解らない」としか言えません。


■4-3.正当性について:滑走順・ホームアドバンテージ・ブラックボックス編

 本項、主に初稿から4年後のソチ~世界選手権にて感じたことになります。

・滑走順:早いと抑えられる編
 本項14/02/23追記。
 ソチの真央FSの得点について、フィギュア関係者がこぞって「滑走順が早かったので抑えられた」と仰っています。現採点法は「絶対評価」ですから、佐野稔氏が14/02/22のサンケイスポーツに「本来ならこのような考えはあってはならない」と書いてらっしゃる通りだと思いますが、みなさんもう堂々と“あってはならないことがあった”と仰る。
 「審判も人間だから」は免罪符にはなりません。

 さらにそもそも、本当に「滑走順が早いと抑えられる」ことがあるのかどうか自体も疑問です。
 いくつか具体的に書き出してみます。

・真央FSにつき岡崎真氏がTVで「10.00出してしまうとその後もっといい演技があったら困るので」と仰っていましたが、そういう極端な例ではなく例えば「9.00だと思うけど8.75に抑える」ことにどれだけ意味があるのでしょうか。

・岡崎氏の理屈では10.00は最終滑走以外出るハズがありませんが、ソチFSで10.00を複数獲得してるカロは最終滑走どころか“最後から5番目(20番滑走)”でした。もちろんカロの後に滑る4人は最強の選手たちです。

・ソチSPのヨナは30人中17番滑走(後ろに13人)でしたが、“明らかに抑えられた”という印象はありません。今期最高点でSPトップ、PCSに限ってみても35.89はカロ(36.63)に次ぐ2位でした。

・真央FSは24人中12番滑走(後ろに12人)でした。第2グループとは言えグループ最終滑走でしたから、つまり“凄い演技するかもとジャッジが懸念した”と想定される最終グループとの間には第3グループしかなかったワケです。
 その6名は下表の通りです。ちょっと失礼な言い方になるかも知れませんが、真央に“判断した通りの得点を与える”ことにどれだけの躊躇が必要だったというのでしょうか。

・世界選手権2014のSPで真央は「今期最高」どころか「世界歴代最高」を叩き出しましたが、この時の滑走順は第5グループの1番滑走です。全6グループでしたので、この記録はつまりまだトップ選手11人が滑る前に得たものです。ソチFSでは真央の後は12人でした。人数で言えば一人しか違わないワケです。11人と12人の違いは下表の通りです。この差によって「オリンピックFSでは抑え」て「世界選手権SPでは抑えなかった(歴代最高を出した)」ということになります。
 一体、どんな事情の違いがあるというのでしょうか。
滑走順
・同じく真央のSPについてですが、PCSは35.85が出ています。3Aにミソついた以外は非常によかったGPF福岡SPでは34.91でした。福岡では最終滑走でしたから滑走順で抑えられた可能性はありません。さいたまではそれを超えているワケですから、PCSに限ってみても、さいたまでは実は結構滑走順早かったにも関わらず、少なくとも“明らかに抑えられた”数字ではないでしょう。

・16/11/16追記:GPフランス2016SPでメドべぇは歴代2位の78.52を出しましたが、抽選で引いた滑走順は2番でした。

・17/04/14追記:田村明子氏が断言されましたね。

 フリー翌日にソチで会った元アイスダンス五輪チャンピオンのグエンダル・ペイゼラは「フリーは真央が1位で当然だった」と憤慨したが、ジャッジはあの演技に相応しいスコアを与えてくれなかった。だがあれは女子フィギュアに永遠に輝く、1つの記念碑だと思う。
出典:http://number.bunshun.jp/articles/-/827846?page=2

 以上、滑走順が早いと抑えられるという傾向は見いだせません。
 真央のソチFSは抑えられた…玄人さんがこぞって仰っているのでそれを事実とするなら、その原因は「滑走順が早かったから」とは思えません。

 なお、余談ですが、「早いと抑える」があるとするならその理由は点数の高い方向への“マージン”を残しておきたいということでしょう。ですので、もし「早いとデキが良くても抑える」ことがあったとしても、「遅いとデキが悪くても上げる」ことはないでしょう。低い方向への点数はあり余ってますので、悪いと思えば思った分だけ下げられるでしょうから。

・予断
 14/06/28追記(別稿から移動)。
 ちょっと古い話になりますが、「ジャッジは選手の状態を公式練習で確認している、だから公式練習ではミスなく技を出す必要がある」と小林れい子コーチ(世界選手権2008などで真央をサポートしていた)が真央にアドバイスしていた、という記事がありました。

浅田やヨナらトップレベルになると、ジャッジの判断にはその大会の状態で、演技点の出方に微妙なバイスがかかる。公式練習から、もう戦いは始まっている。小林はその重要性を繰り返し、浅田に伝え続けてきた。
出典:「真央らしく」 P.29



 この記述は演技審判だけが対象なのかも知れませんが、技術審判も「厳しく見るアタリ」を公式練習などで事前に付けている可能性もあると思えます。その傍証になるかは解りませんが、14/04/12の本田武史さんの講演会で「ステップのレベル判定のために公式練習で事前にチェックしている」といったことが語られていた、というBlogを拝見した覚えがあります。

 この「公式練習の印象による予断」がかなり大きいのだとするなら、ソチFSが「抑えられた」理由のひとつに考えられるかも知れません。当日朝の公式練習の真央はまだ全く精彩を欠いていましたから。
 いずれにろ予断で採点なんて冗談じゃないと思います。事実上そうなっているなら、明らかにシステムの瑕疵でしょう。
 ていうかそんなに予断があると言うなら「研修ビデオの影響はない」なんて信じられないのですが…

 もっと言うと、公式練習などだけでなく「この選手はジャンプ回転不足気味」「この選手は回転心配ない」といった“固定的予断”の存在も疑ってしまいます。必ずレビューかけて厳しく見たり、逆にレビューしないで見逃したりといったことになってないのでしょうか。
 悪い予断は実績で払拭しなくてはいけないのでしょうけれど、一度付いちゃうと
「あやしいから厳しく見る(大丈夫そうに見えても必ずレビューする) → やっぱりエラー → 厳しく見る」
という負のスパイラルになり抜け出すのは苦労しそうです。逆にいい予断の選手は
「大丈夫だろうからレビューしない → エラー付かない → やっぱり大丈夫」
という正のスパイラルということに。
 もし固定的予断があるとするなら、最初の予断はどうやって形成されたのか、そこに“意図”が入り込むスキはないのかが問題になろうかと思います。

 16/12/18追記。やっぱり「予断」はあるようです。

■「よいと思ったものにきちんと点を」

 難度の高いジャンプを跳ぶ数が増えると、ジャンプに気をとられ、演技に味を出すトランジションやエッジワークがおろそかになり、スケート用語でいう「スカスカのプログラム」になりがち。結果、ブラウンのようなジャンプ抜きでも「心に残る」演技が減っている。

 「価値点の高いジャンプを跳べる選手が増えたためにゆがみを感じる人もいる。関係者の間でも『演技構成点の要素を上げないと釣り合いがとれない』という話は出ている。まだ新たなことは全く決まっていないし、シーズン中なので活発な議論はされていませんが」と岡部さん。ジャンプの得点を下げることはないとしつつ、「(価値点の高い)ジャンプさえ跳べれば勝てるというのはフィギュアスケートの方向としては正しくない」。現時点では、ジャンプの成否にかかわらず、「演技構成点の5要素のうち、どれが失敗によって影響して、どこが一番優れていて、どこが一番弱いのか、見極めないといけない。ジャッジには勇気を持って、よいと思ったものにきちんと点を出すように指導している」と岡部さん。しかし、ロシアや北米のような、ジュニアからトップまで様々なレベルの選手が多くいるフィギュア強国と、競技人口が少ない国ではジャッジに技量差があり、残念ながら事前に過去の試合のスコアシートをチェックするジャッジもいる。簡単にはいかない。

出典:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO10639990U6A211C1000000/?df=2

・滑走順:遅いと(FS最終グループだと)ボーナスがもらえる編
 前項は「早いと抑えられる」についてですが、以下「遅いというかFS最終グループだと盛られる」についてです。
 ソチFSについて、次のような荒川さんへのインタビューがありました。

荒川 ~前略 あのフリーの演技が最終グループだったとしたら、点数はもっと伸びていたのではないでしょうか。
-- 浅田選手はフリーは第2グループでした。
荒川 どうして第2グループと最終グループとで点数の伸び方が違うかというと、それだけメダルの重圧がかかった状況でやりとげた結果には付加価値がつくからなんです。後略~

出典:「ワールド・フィギュアスケート別冊 ソチ総特集」 P.80



 それが本当なら酷いハナシです。ISUが勝手にSPの結果をもって「メダル圏内・圏外」を決めちゃっているということですから。
 例えばSPで6位と0.5点差、3位まで2.0点差の接戦を演じて7位となり最終グループ入りできなかった選手には、もうFSでメダルを狙う権利はないことになるからです。それは極端な例で、付加価値対象はグループ単位ではないのかも知れません。しかしそれなら逆になおさら、どこまでの点差が「メダル圏内」だと言うのでしょうか。もちろんそんな規定は存在しませんから、ISUが大会ごとに(SP終了後に)勝手に決めていることになります。
 それはもはや「意図的な順位操作」なのでは?

 そもそも「メダルの重圧がかかった状況」ってケースバイケース、選手それぞれ事情は違うでしょう。そんなもので採点が明らかに変化するなんて信じられません。

 余談ですが、世界選手権2014のFS最終グループを見ると「やりとげられなかった」と言っていいカロのPCSは「やりとげた」ソチとほとんど同じです(73.77→73.78)。一度もらえた付加価値ボーナスは固定されるってことでしょうか? そんなバカな… だって、まさか“付加価値”ってテクニカル判定を甘くするって意味じゃないですよね?(やりとげたか否かまで変わってしまうことになりますから)
 ISUの判断内容は全く判りませんから真実は不明ですが、採点が正当だとするなら、点数の違和感について「やりとげた付加価値説」は成立しえないと思えます。

・ホームアドバンテージ:一般論編
 本項14/02/25追記。
 ソチに関する田村明子氏のコラム(*)で世界のスケート関係者が選手の環境に関してだけでなくジャッジングについても「ある」と明言されています。
 記事にある通り、残念ながら多少はやむを得ないかも知れません。問題はその“程度”でしょう。トップ選手の順位争いでは数点が勝敗を分けますものね。
 ソチの採点について、記事では「やりすぎ」という関係者意見も紹介されていますが、田村氏は(お立場もあり?(笑))「許容範囲内」と結論されています。
 個人的には「やりすぎ」というご意見に同意です。本来あってはならないものであり抑制すべきものにも関わらず「多少はあるよね~」という暗黙の了解に胡座をかいて開き直り、選手への敬意を保っていると見なせるスレッシュを超えていると思えてなりません。
 「審判も人間だから」で許される誤差を超えているという意味です。冷静なジャッジなら逆にそういうバイアスを意識的にマイナスしすぎることだってあるかも知れませんが、そういうところも見られませんし。
 少なくとも「大多数のファンが(しぶしぶながらも含め)納得できる“程度”」だったとは言えないでしょう。
 なお、今回の“ホーム”は欧州選手権も含めた流れで考えるべきです。


*:http://number.bunshun.jp/articles/-/792736
 ちなみに「順位が妥当=採点内容が妥当」でないのは言うまでもありません。ストイコ氏のコメント引用部分はいきなり「順位という相対評価の是非」になっており前後との整合性を欠いています。もちろんわざとでしょうけれど(笑)。
 また、「リプちんは個人戦ではミスしてきっちり減点されている」「選手がやるべきことをやらなければホームアドバンテージもつけようがない」という某ジャッジのコメントを紹介してらっしゃいますが、あまりにも「当たり前」です(わざとでしょうけれど(笑))。
 「きっちり減点」については、減点以前にPCSの出方が問題なのですし、「やるべきことを~」については、言い訳にならないどころか逆に「やるべきことをやったらホームアドバンテージをつける」ということですし。

 ちょっと脱線するかも知れませんが。
 当記事には「滞在して世話になっているホスト国に対して、できるだけ好意的に採点してあげよう、という心情」について記されていますが、それは「ホスト国」に限った心情ではないのでは。普段懇意にしていたり世話になっていたり仲良くしていたりしたら好意的になってしまうこともあるってことになるのではないかと。
 日本人的感覚では「ホームアドバンテージなんてない。そういう心情は殺して採点する」って(嘘でも)言うところではないかと感じますが、言ってしまうということは“いろんな心情的採点がある”のだろうと思わざるを得ません。

・ホームアドバンテージ:日本編
 本項14/04/01追記。
 ソチの後行われた世界選手権2014も終わりましたので、その結果も合わせて表題について具体的に考えてみた内容は世界選手権2014記事の方にまとめましたのでご参照ください。

 …田村さん、「日本にはホームアドバンテージはない」と思いますよ。

 そもそもそんなもの有るべきではないと思いますが、開催国によって「あったりなかったり」するならさらに酷いハナシです。
 そして、もし「ホームアドバンテージ」「ボーナス」などというものが無視できないほど存在するなら、問題は、それらはもちろん公式な採点ルールではありませんから「今回限りだよね」ということにはならず、上昇したPCSは正当なものとして「実績(ネームバリュー)」に固定されてしまうであろう点でしょう。
 例えば、リプちんのGPF2013福岡とソチ団体戦(ホーム)とソチ個人戦(ホーム)と世界選手権2014のFSを見てますと、

 TES:64.93 → 71.69 → 66.28 → 65.57
 GOE: 5.84 → 10.47 → 6.71 → 6.66
 PCS:60.52 → 69.82 → 70.06 → 68.39

 私には、アドバンテージとかボーナスなどという評価は“いかがわしい”にも関わらず一過性のものには見えないです。

・ジャッジ(演技審判)の自制心
 本項14/03/05追記。
 上記田村氏のコラムにも「盛り上がるとつい気前よく出すこともある」という記述がありますが、ソチの団体戦プルシェンコの採点に関する現役テクニカルスペシャリスト天野真氏の新聞コラムにも「あれだけ見せつけられたら、ジャッジも我を見失って高得点を出してしまうのかもしれない」とあります。
 氏はテクニカルスペシャリストであってジャッジ(演技審判)の肩書きではありませんが、現在のISUジャッジングシステムの実態をよくご存じだと考えていいと思います。
 ジャッジ(演技審判)の採点には冷静ではない結果もある、と理解できます。

・ブラックボックス
 本項14/03/18追記。
 採点結果に疑問が生じる理由として、よく「素人には判らない」「テレビ観戦と生では違う」系の関係者コメントがあります。
 枚挙に暇がないですが、参考例としてNumber849の「NUMBER OPINION:フィギュア採点はこれでいいのか?」を見てみますと、具体的に「ジャッジ(やテクニカルパネル)が感じるものは(TV)映像では伝わらない」「選手はジャッジに対してアピールしているので観客席では判らないことがある」といったことが語られています。
 しかし、この考え方(業界側の説得)は根本的に間違っていると考えています。
 何故かと言えば、「会場の観客」「テレビの前のファン」に理解が得られてこそスポーツとして発展できるからです。理解が得られないことを是とするのはおかしいです。
 競技の振興を考えないのであれば関係者だけで細々と開催していても構いませんが、現実に五輪の競技にもなっているワケですから。
 ですので、採点の理由がジャッジやテクニカルパネルだけしか判らない状態は健全とは言えません。
 まずは、

 「なぜUR判定となったのか、ならなかったのか」
 「何故GOEがこれだけ付いたのか、逆に付かなかったのか」
 「何故PCSが高いのか、前回からどこがどうが良くなったので上がったのか、悪かったので下がったのか」
 「何故上がらないのか、下がらないのか」

といったことをISU見解として“公開”すべきだと考えます。最初は「大会総括」レベルでもいいでしょう。
 同時に、「観客(TV観戦も含め)」と「ジャッジ」が極力同じ観点になれるような工夫を積極的にすべきです。
 例えば、(それが本当にあるのなら)ジャッジ席でしか判らないことは点数にならないようなジャッジングシステム自体の見直し(やむを得ないなら詳細な解説の公開)や、ジャッジ視点でのビデオ画像公開、などによる採点観点の共有などです。極端な例ですが、そんなにジャッジ席が特等席過ぎるというのなら「ジャッジ席を会場内に分散させる」のもいいかも知れませんね(苦笑)。

 しかして、そのような改善の兆候、努力の姿勢は全く見られません。疑念を持たれていることは充分承知しているハズですが、すべてISU内部でクローズしたままです。
 決してファンに迎合しろと言っているのではありません。ベテランジャッジの視点などが公開され共有されたりすれば観戦する側の理解度も上がり、より興味も深くなり、それはひいては競技の振興発展に繋がっていくことでしょうから。


■4-5.正当性について:どう考えるか

 以上、代表的な正当性への“疑惑”を挙げて考えてみました。
 これらを鑑みますと、ハッキリ言って「充分に正当な採点が行われている」とは思えません。

 主観的な判断を廃し、原則として、Resultデータや現役ジャッジやコーチやJSF理事の方の見解など、客観的データやプロが発信した情報から考えた結果として、です。

 が、充分に正当であることを目指しつつも、パーフェクトでない状況を甘受しなければならないのが採点競技の宿命と言えるとも思います(*)。
 たとえはヘンかも知れませんが、サッカーではホームアドバンテージが当たり前のように語られます(審判の判定含め)。しかし、アウェイチームのサポーターは、豪快なシュートでそんな不利をぶち破って勝つことにまた興奮するのですね。フィギュアもそんな見方をほんのちょっと入れて観ないといけないのかも知れません。
 6点法の時代はそれも暗黙の了解だったような気がしますが、新採点法でResultが公開されることによってそれが忘れられちゃったのかも知れません。
 “程度問題”ですけど(苦笑)。

*:http://blogos.com/article/83492/
 14/05/01追記:主観の絶対評価という点で根本的な矛盾やバラツキを内包しており、不完全な状態で運用と改定を続けているということが具体的に記された記事です。
 内容に異論はありませんが、ファンの違和感はISUという組織の「真摯さ」の問題ですので、ルールやその改定コンセプトがいかに優れていても解消されません。


 14/07/26追記:新採点法作成の重鎮クリック夫人のインタビュー(世界選手権2013時)で、「理解していても(理解している通りに正しく)使っていないジャッジがいる」「勇気がないからなのか、何か意図があるのか、理由はわからない」と、そのままのことが語られています。

多くのジャッジがいて、きちんと使いこなしているジャッジもいます。また知っていても使っていないジャッジもいる。理解していることと、実践することは違いますから。自分の信念を表現する勇気がないのか、あるいはほかに意図があるのか、他の人のことはわかりません。
出典:「ワールド・フィギュアスケート No.58」 P.43



 14/12/07追記:そして、続いて以下のように語ってらっしゃいます。

それからジャッジの採点が他のジャッジと極端にずれていた場合、5コンポーネンツ全体の合計で平均値と比べられます。でもこれは間違っています。もともと5コンポーネンツは、順位を決めるために使われるべきものではなかったはずです。スケート技術、トランジションなどは、もともと別々に評価をしなくてはならないものでしょう。
出典:同上

 この部分、暫く意味が解りませんでした。どう見てもPCSは順位を決める要素ですから。
 が、あるとき、文字通りの意味なのだと気づきました。
 「ジャッジ個々の純粋な評価ではなく」「(予断として)順位を決めるために使われている」のが現状だと、ISUの重鎮がハッキリそう言っているのです。「Program Components Score」じゃなくて「Place Control Score」になってると。
 答えは出ていたんですね。


■つまり…

 以上、新採点法について多方面から見てきましたが、やっと、なんでこんなに違和感や不公平感があるのか判った気がします。

 つまり、なんだかみんな誤解(期待)しちゃったんだね。「得点内容が詳細に判明する=正当性が上がっている」と。
 でも、きっとそんなことなくて、旧採点法の時と採点の基本方式…かつては技術点と芸術点の2項目だけだったのが、エレメンツやコンポーネンツ、GOEと細分化されただけで、採点は審判の感覚に依るところ大であるという方式、は変わっていないんです、たぶん(笑)。透明性は上がってるけど正当性が上がってるワケじゃない(爆)。
 じゃあ、新採点法を導入した目的は? っていうと、正当性の向上じゃなくて技術の進歩に対応して得点の差=順位を付けやすくするためだったんだですね。
 平松純子氏がインタビュー(*)で仰ってる通りなのでしょう。

*:http://www.oaj.jp/interview/04_hiramatsu/

 もうひとつ、GOEとかPCSとか(おそらくDG判定も)は「目安=ガイドライン」であって「遵守義務のあるルール」ではないのに、ガイドライン=ルールと誤解しちゃったんです、きっと。

 これら「誤解と期待」が根本的原因ではないでしょうか。

 ぶっちゃけ、これだけ採点システムをオープンにしちゃってるからこそいろんな疑問も出てくるワケで、ちょっとISUに同情しちゃうところもありますね。
 基本的にはフィギュアスケートはかくあるべき、こうしていきたいといった「理念」を確定できず迷走してるっぽいところがダメ感を醸し出しちゃってると思いますが、まあ、いろんな思惑が入り交じるのでやむを得ないところもあるのかな(苦笑)。

 13/11/21追記:ISUに対してはその後考え変わってます。特に2013世界選手権を観て「同情の余地なし」に(大爆)。

 14/02/01追記:「ISUジャッジングシステム」自体に関する考察を記事にしました。本稿の続編、みたいなカンジです。

  ←ハードカバー版    ←こちら文庫版。新採点法導入の経緯なども詳しい。

 11/01/14追記:「氷上の光と影」を文庫版でやっと読みました。で、思ったことがあります。審判の匿名制は「匿名にすることで良心に基づいた判定ができる」という性善説を、「匿名にすることでズルできる」より優先して採用したものです。
 一方、回転不足ジャンプに対するダウングレード+減点ルールは「跳べないのに挑戦して得点を稼ぐことを防ぐ」ためであるように読めます。つまり性悪説です。ハンドブックでは回転不足ジャンプのことを「cheated jump(邦訳ごまかしジャンプ)」って呼んでますし。
 審判は性善説、選手は性悪説なんですね、新採点法って。





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