とある科学の偽薬効果

10/12/11初稿

 ケーブル(デジタルアナログ関わらず)換えることに代表される「何か変えると音が変わるとは本当か」について、少しまとめておこうかと思い立ちました。特にDigital-Audioに関しては議論姦しいですもんね。
 一応、本稿では「Audio」に限定して記します。


■学術研究対象?

 よく、「科学的な根拠がない」という意見を見ます。しかし、これには2種類の段階があると思っています。

・本格的な学術研究(理論と実験)によって客観的に「否定」または「肯定」されている。
・そもそも本格的(絶対決着つけちゃるぞ)な学術的研究がされていない。

 前者の事例はあるのでしょうか。ただし、これには音響的実験(もちろん机上理論だけでなく実測による検証まで)だけでなく心理学的な影響まで解析が必要になる可能性もあると思っています。
 個人的には後者ではないかと思っています。といっても、科学技術水準のレベルの問題ではありません。研究する費用対効果の問題が大きいのでは。たぶんこれを研究しても偉くなれないんじゃないでしょうか(苦笑)。
 「客観的事実として変わる・変わらない」と言い切るには学術的に証明されている必要があると思います。
 「個人的には変わると感じるのでそう思っている」というのは全くの自由でしょう。ただ、個人的にはデジタル転送(少なくともS/PDIFレベル)の知識などはある程度持っていた方がよいとは思いますが…

 あ、いえ、http://adlib.rsch.tuis.ac.jp/~akira/hit/papers/ とか、http://ci.nii.ac.jp/Detail/detail.do?LOCALID=ART0003685828&lang=ja みたいな研究がなされているのは知ってますけど。

 「高度感性情報」ってなんぢゃ~


■音響工学的アプローチ編:音声知覚の違いを検証するには

 大前提として、スピーカへの出力電気音声波形の違いを見るだけではダメだと思います。学問的に本格的に検証するなら、“人間の音声情報知覚システムとして”違いを検出しうるかをみなければなりますまい。なので、実際の音響空間での実験は必須でしょう。
 スピーカケーブルをスピーカに繋ぐこと自体がメカ的な振動状態の変化になっちゃいますし。

 まずは無響室などの無粋な環境ではなく、通常のリスニングルームを設定することが必要でしょう。ラックやスピーカスタンドもちゃんと用意するのはもちろん、家具やカーテンなども再現しないとね。割と見落とされるような気がするのが電源です。これも普通のご家庭の環境を再現しないとダメですよね。どこかで蛍光灯やPCが動いてるようなね。
 んで、人間は音を耳の穴から入ってきた音波による鼓膜の振動だけでなく、体全体の振動で知覚している可能性もあると思いますので、例えばですが

・人間の体の音響特性(耳たぶの形から骨伝導まで)を考慮した人形を作って、耳の奥に(マイクというよりある意味人工聴覚とでもいうべき)音声センサ装置を埋め込み、音声信号データを採取
・得られた音声信号を解析し「音質の違いと知覚するであろうデータの差異」が発生しているかどうかを検証

しないと真実に迫れないかも知れません。
 その解析のついても、漫然とですが何かAudio独特のノウハウが必要なような気がしています。
 もちろん、実験に使う音声はサイン波とかじゃなくて“音楽”であるべきです。


■電気工学的アプローチ編:音声波形の違いを検証するには

 「何かを変えたことによるチップ動作の違い」が音声電気波形に違いを生じさせる可能性が仮説として成立した場合、それを電気的に検証することは可能かと思います。この場合はスピーカの前で決着できますね。人間の聴覚知覚のシミュレートまで踏み込む必要はないです(笑)。
 例えば、

・HDMIレシーバが発生させるノイズレベルは入力信号のスキューレベルによって異なることが、チップ設計上判っている
・それが回路上DACのアナログ出力に影響する可能性があるという理屈が仮説として成立する

なら、それを電気波形として測定してみる、といったことです。
 あ、でもやっぱりその電気信号の変化が音質の違いとして知覚できるのか、は音響的実験しないと結論できませんよねぇ。


■心理学的アプローチ編:プラシーボ効果を検証するには

 プラシーボである可能性はありますね。可能性を否定した科学的根拠を知らないので否定はできません。実際プラシーボな評価も結構あるかも知れません。しかし、そうカンタンに「ブラインドテスト」やって証明できるものでもないと思っています。要するに「官能評価」という評価手法の一種でしょうからいろいろ考慮しないと。
 私はド素人ですが思いつくことを記すと、まず、被験者のセレクトが必要でしょう。だって実際に音が変わったことを聴き分けられる人じゃないと意味がありませんから。当たり前ですけど。例えばスピーカのインシュレータを換えたとか、WASAPIとDSとか、皆川純子と本田貴子(笑)などの違いが判る被験者を数名準備する必要がありましょう。
 また、本件に関心がない人を選ぶのが理想だと思います。関心ある人は最初からいろんなバイアスかかってますから。テストに用いるケーブルの持ち主なんて参加しちゃダメだと思いますよ(笑)。
 試験条件も結構センシティヴだと思います。例えばPC-AudioでUSBケーブル交換した場合、USBデバイスの再認識になりますから、再起動しないと条件は同じになりません。最低でも1分くらいは間が空いてしまうのでは。それで直前に聴いた音をどれだけ覚えていられるでしょう?

 ちなみに、音の変化を「良く効く薬だと思いこんで飲むと薬でなくても効く=偽薬効果」というのも本来はちょっとズレてて、Audioでは「良くなると思いこんでるから良く聴こえる」とも限りません。ワクワクしながら超高いケーブルに交換しても良くなったと思わないことだってありますから。良くなったハズだと思いこもうとしてもダメなことあります。
 それすら「良くならないかも知れないという不安感やプラシーボと言われたくない心理がたまにそういう結果を導く」といった可能性を説くなら、まさにかなりツッコンだ心理学的なアプローチも必要となるでしょう。

 なお、味覚や嗅覚や視覚に関するブラインドテスト的な既存情報と聴覚を同一次元で語ってもあまり意味がないと思います。それぞれ脳の騙されやすさは違いますので。

 「騙されない知覚」を生業にするブレンダーとか調香師といったプロもいらっしゃるワケですから、聴覚に関するプロの方々によるテストをやってくれたら面白いなんて思ったりします。やるとしたらテレビ番組でしょうね。あ、消費者センターなんてのもアリ?
 被験していただくのは、一流ピアノ調律師、世界的バイオリン奏者、虫の音聞き分けチャンピオン、なんてどうでしょう?


■素人考え

 …よく考えたら、結局人間は最終的には脳で補間や変換しながら音聴いてるワケですから、例えば、

・脳の知覚動作における、特殊事例ではなく一般的な現象として、例えばある条件の音波を聴いた時、その波形には含まれていない周波数などの要素が聴こえること
・その条件に相当する変化が「オーディオで何かを変えた時」に起こっていること

が証明できたら、本当に音波自体がそのような変化していなくても、それはそれで立派に「音が変わった」と言っていいハズです。脳での知覚以外に音を聴く術はないのですから。
 そして、その「脳での違って聴こえ方」は、音波波形の違いとは一致しない可能性が高いのではないでしょうか。とするなら、物理的な音波波形の解析だけやってもダメってことですよね。

 ケーブルに限ってのハナシですが。
 光S/PDIFなど例外として、通常、ケーブルで機器間を接続するということは電気回路としてひとつの系になるということです。電源を入れるとAC側でも電気回路として結合します(一応壁コンまでで切って考えましょう)。
 例えばPCとUSB-DACとプリメインアンプとスピーカまでが連続した電気回路として、ひと組の回路図として記述可能となります。とすると、例えばUSBケーブルの抵抗成分はケーブルによって無視できないほど違いますので、回路図のケーブル部分には抵抗を入れることになります。そして、その値はケーブルを換えたら変わることになります。
 つまり、「電気回路として変わるのだから系全体の特性に変化が発生する可能性がある」という考え方は客観的に全面否定できるのでしょうか。もちろん客観的に肯定もできませんが。
 「否定はしない。変化はあるだろう。だが人間が聴き取れる変化ではない」というロジックの選択肢もありましょう。う~ん、やっぱり音響工学的アプローチが要りますよね。
 なお、判りやすく「回路図」「抵抗値」のレベルで記しましたが、電気回路の系としては回路図に出てこない要素もふんだんにあることは承知しているつもりです。


■人類の英知とオカルトと

 「オーディオで何か変えたら音が変わる」についての本格的な学術的客観的事実の解明は「現代科学水準では不可能なのだ」という意見もたまに見かけます(冗談かも知れませんが)。しかし、現代科学がそんな陳腐なレベルとは私にはとても思えません。実績がないとしたら最初に書いた通り費用対効果の問題でしょう。
 オーディオメーカだってオーディオ専用解析装置なんてそうカンタンに開発できないでしょうし。なので実際にはヒアリングで開発してるっぽいし。ONKYOのP-3000R/M-5000R/C-7000Rプレスリリース(*)なんて見ると、「測定できない」って白状してるしな~

*:http://www.jp.onkyo.com/news/newproducts/audio/pureseparate/p3000r_m5000r_c7000r.pdf

 15/03/10追記:SONYの「高音質microSDカード」のインタビュー記事(*)でも、「周波数特性やSNなどとして音質差は測定できなかった」という発言があります。なんて正直な…

*:http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/20150309_691795.html

 もし何か専用の測定をしていたとしても、いろんな事情があって公開できないかも知れませんし(研究機関じゃないので商売に不利になるような情報開示はしないでしょう。する義務もないし。もちろんウソはダメですけど)。
 そんな中、例えば“実際にはビット化けは発生していないのに”「高品位な転送」「高精度な伝送」といった曖昧な文言によってウソじゃないけど勘違いさせるような売り方をするメーカや評論家、どころか「転送エラーを低減」とマジウソな効能を言っちゃうメーカもあるので、いかがわしいイメージになっちゃってる面はありますよねぇ。

 もしもオカルトとすると世界中でずいぶん大勢の人が普通に体験する超常現象ですよね。いや、冗談です。


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