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iTunesを10から11にすると音質が変わる?:AAC編

13/01/11初稿

 ≪iTunes≫を10から11にupdateすると音質が変わるという話があるそうです。
 WASAPI排他モードが使えないのでプレーヤとしては眼中にないiTunesですが、「プレーヤソフトのバージョンが変わると音が変わる?」という件については興味あるので、ちょっと確認などしてみました(興味本位なので何か結論を出す目的ではないです)。

 「PC-Audioにおいてプレーヤソフトやそのバージョンで音が変わる」という話がメジャー展開された初の事例と言えるかもしれませんね(笑)。

 Macは持ってませんのでWindows環境のみです。もしかしたらMacだけの現象かもしれませんがご了承ください。


■≪iTunes≫のバージョンで音質は異なるか

 藤本健氏の以下の記事を読んでそういう話があることを知りました。

「iTunes 11で音質が変わった?」を検証
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/20130107_580741.html

 藤本氏の記事はいつも参考にさせていただいており、大変勉強になっています。
 が、この記事は、お題目からのイメージと内容がやや乖離しているような気がします。

・ビットパーフェクトならアナログ音質は同じか
 Macにおける≪iTunes 10≫と≪iTunes 11≫のデジタル出力を同時に確認することにより、Macでの≪iTunes≫はビットパーフェクト出力していることと、10も11もそれは変わらないことを検証されています。デジタルキャプチャしたWAVファイルとオリジナルファイルを≪WaveCompare≫で比較されてますので、WAVファイルの再生と推察します。

 つまり、これだけでは、最終的なアナログ再生音が異なるか否かとは無関係に

「Mac環境の≪iTunes≫の10と11におけるWAVファイル再生ではビットパーフェクト」という結論しか得られていない

ことになります(釣りかな?(笑))。

 「アプリケーションソフトが変わっただけで、ドライバを含めハードウェアに影響を及ぼすことは理論的に考えにくい」と結論されていますが、同じデジタルデータでもアナログ再生音は変わりますので(かつて、氏自身がCD-Rの音質差を追求されているように)、その“程度”こそがまさにキモなハズです。
 今回は正に「アプリケーションのバージョンが変わった“程度”でもやはり変わるのか」というPC-Audioの永遠の課題に相当する話題だったワケですが、それが検証なく断定されていることなってしまっているのが残念ですね。
 Audioの音質をホワイトノイズスペクトルで語れないのは言うまでもないですから。だってそれで人が聴こえると主張している音質変化を明示できるならオカルトだのプラシーボだのって話になってないですもん。

・非圧縮ソースの話なのか
 ところで、素朴な疑問が。
 ≪iTunes≫というアプリの使われ方からして、「音質が変わった」というのはiTunesStoreで購入したAACファイルを聴いての感想が多いのではないでしょうか。
 だとすると、iTunesStoreの長年の標準フォーマットである「AAC128kbpsという圧縮音楽データのデコード特性」の違いを最優先に考慮する必要があるのではないでしょうか。
 というか、それが一番可能性ありそうな(苦笑)。

・AACのホワイトノイズスペクトラム
 ということで、AACでの検証してみました。
 以下、Windows7 HomePremium SP1 64bitの環境にて(iTunesもすべてx64バージョン)。また、本稿でのAPIは(設定できるものは)すべてDirectSoundです(WASAPI共有モードが選択できてもあえてDSに設定)のでビットパーフェクトではありませんが、今回のテーマにはあまり影響ないでしょう(もともと圧縮ファイルですし)。
 また、≪iTunes≫のイコライザはflatに設定した上でチェックを外して再生しました。ボリューム類はもちろんMaxです。この条件は以下試聴も同様です(ボリューム以外)。

 オーディオチェックCDからホワイトノイズのトラックを≪iTunes 10.2.2≫+≪QuickTime 7.7.3≫の環境でAAC128kbpsにリッピング。
 このファイルを、≪iTunes 10.0.0≫(一番古いバージョン10ということで選択)と、最新の11.0.1で再生(≪iTunes≫がAACをリニアPCMにデコードしているハズ)。S/PDIF経由でデジタルキャプチャします。これで44.1kHz/16bitにデコードされて出力されたデジタルデータがWAVファイルとして(アナログ要素を排して)ゲットできました。

・USB DDC・・・SoundBlaster DigitalMusicPremiumHD
    S/PDIF出力を入力したループバック(詳細はこちら)
 キャプチャソフト・・・RecPcmWin x64 1.04
    もちろん排他WASAPIにて(って専用ですけど)
 比較ソフト・・・WaveSpectra 1.50
    もちろん排他WASAPIにて

 比較結果、違いがあるとは思えませんでした。どちらも16kHz過ぎまでフラットと言っていいのではないかと。
 一応、11.0.1の結果だけ載せておきます。

1101スペクトル

 まあ、予想通りでしょうか。素人が見るスペクトラムで違いが出るようなレベルの話ではないと思えますので。

・デジタルイコライジングするとデータはどうなるか
 せっかく録った(撮った)ので以下参考まで。
 あきらかに違って聴こえるくらいイコライジング

1101EQ.jpg

してキャプチャしたファイルではこんなスペクトル

1101スペクトル 8k+3dB 16k+6dB

になりました。
 こういうイコライジングレベルだとこういうスペクトルになるって一例です。ログの方が分かりやすいかもしれませんが、とりあえず。

 素人なので何か間違ってたらゴメンナサイ。

・WAV化して比較すると
 ≪iTunes≫素人なので気付くのが遅れましたが、「WAVバージョンを作成」って機能があるんですね。おそらくデコーダ出力そのままをファイル化する機能だと思います(APIの影響は受けないハズ)。
 この方が純然たるデコーダの(デジタルなデコード結果としての)の違いが解りやすいかもしれません。
 上記ホワイトノイズAACを10.0.0と11.0.1それぞれでWAV化して≪WaveCompare≫で比較、バイナリエディタで眺めてみました。
 結果、最下位ビットあたりが微妙に違うデータになっていました。

 おお、10.0.0と11.0.1ではデジタルレベルで異なる=音質が異なる じゃないですか!

 あくまでも通常再生時にも同じデコーダが使われているという仮定の話ですが。

 が、音質にどれだけ影響する差なのはかいくらデジタルデータを眺めても解りません。
 ので、WAV編集ソフトで一方を波形反転して合成してみたところ、0000hとFFFFhと0001hだけの波形データになっちゃうようです。
 つまり、各サンプル単位の差分は、あっても±1ってことになります。
 よって、この違いは、程度の問題として、アナログ再生において“あきらかな音質変化”に相当するとは思いにくいです。

・≪QuickTime≫と≪iTunes≫の蜜月はいつまで続いているか
 もし「デコーダ」が影響しているとするなら避けて通れない課題がこれです。
 かつては≪iTunes≫には≪QT≫は必須でした(というか再生は≪QT≫が担っていると言われていた)。が、最近は必須ではないようです。では、いつからその関係は解消されたのでしょう?
 ERIでは≪iTunes≫はリッピングにしか使ってませんのでアルバム管理データなどはありません。ので、アンインストールして旧バージョンをインストールし直すのも全く問題ありませんから、各種バージョンで確認してみた結果です。

 10.2.2→10.3.0→10.4.0→10.4.1までは≪QuickTime≫が同時インストール不可欠であり、

104110インストール画面

≪iTunes≫を起動したまま≪QuickTime≫をアンインストールすると、≪iTunes≫を強制終了させられます。
 そして、≪QT≫削除後には≪iTunes≫は起動しなくなります。

Quicktimeがみつかりません

 その次の10.5.0(10.4.2はなさそうなので)からは≪iTunes≫インストール時に≪QT≫はインストールしなくなりますし、実際≪QT≫がなくても≪iTunes≫は動作します。もちろん11.0.1もです。

1101インストール画面

 10.5の更新履歴に

* No longer requires QuickTime to operate.

とありますので、間違いないところかと。

 ということで、

「同じバージョン10でも、10.4.1以前と10.5.0以降ではプレーヤソフトとして結構違いがあるのではないか」

と思えます。10.5.0からはそれまで≪QuickTime≫と共有していた再生プログラムを自身に内蔵するようになったワケですので、もしそこですでに音質差(デジタルなデコーダ特性というだけでなく正にプレーヤアプリプログラムとしての違いも含めて)が発生していたなら、10.4.1以前の方と10.5.0以降の方では、11にUpdateした際の違いの感じ方が違っている可能性もあるのではないでしょうか。
 10から11の音質変化についてのネット上の評価は「向上」と「悪化」両方あるようですが、これがその理由のひとつかも知れません。
 もしかしたら同じDLLのQTとの共有方法を変えただけかも知れませんが。
 13/01/26追記:本件新展開がありました。“だけ”じゃないようです。詳しくはWAV編をどうぞ。

・実際音質差はあるか
 ビットパーフェクトじゃないので興味なかったのですが、せっかくなのでちょっとだけ。
 PC-Audioとしては≪iTunes≫は使っていませんので、Audio的には何も考慮していないメインPCにUSB接続した上記SoundBlasterのヘッドホン出力からのHD650における試聴結果です。インストール直後の状態で、曲リストを1曲だけ表示して再生。

 まず≪iTunes≫も≪QuickTime≫もアンインストールした環境に10.0.0をインストール(同時にQT7.6.7がインストールされました)。この環境である曲をCDからAAC128kbpsにインポートしてして聴き、その後11.0.1にUpdateして聴き比べてみました(2回繰り返し)。
 10.5.0以降の「再生プログラム」変更の影響も含まれてくるハズです。
 10.0.0のAPIはQTでDSを選択しており、あえてフォーマットも44.1kHz/16bitにしました。実はSoundBlasterHDのDACは44.1kHz非対応なので48kHzへのサンプリングレート変換が発生するのですが、それはOSのオーディオエンジン側にやらせようという意図からです(設定できない11.0.1ではそのまま渡しているとの推定から)。
 ただ、≪QT≫の設定が≪iTunes≫に影響しているか否かは以下に記した通り疑問です。

 このDACはアナログボリュームは持っていないので、OSのマスターボリューム50%にて。

 結果、11.0.1の方がよいと思いました。低域のこもり感・ひずみ感といった“閉塞感”が減少してクリアで細かい音がよく聴こえると感じました。
 再生環境によってはもしかすると低域の量感が減って高域がシャリシャリして聴こえるかも知れませんが、おそらく本質的には11の方がいいのではと。微妙な差ですけど。
 あくまでもウチのメインPC環境での主観評価では、ですが。
 カジュアルなイヤホンで聴いたり高級Audioで聴いたりしたらまた違った評価になるかも知れませんね。

 もちろん、アルバムアートの表示やネットとの通信状態、クリーンインストールではなくUpdateの場合の事情差など、いろいろ条件違いはあるでしょうね(そもそもWindowsとMacではまるで違うでしょうし)。
 ちなみに11.0.0でもおかしなところはないようです。

 10.0.0と11.0.1では動作している≪iTunes≫関連のスレッド数が異なることも確認しましたが、それ自体は音質差の何の証明にもならないですよね。

・≪iTunes≫というか≪QuickTime≫はいつから64bitWindowsでもWASAPI対応しているか
 全くの余談ですが、当初32bitのみ対応だった≪QuickTime≫でのWASAPI(共有モードですが)、現在では64bitでも使えるようになっています。7.6.9からという情報を見かけましたが、最新版の7.7.3で実際共有WASAPIが選択できることを確認しました。ちなみに7.6.7では選択不可。

QT767:x64でWASAPI選べず
↑7.6.7では選べず

QT773:x64でWASAPI選択できる
↑7.7.3では選べる

 選択できても出力フォーマットは選べないのが面白いですね。OS側任せということになるのでしょう。
 共有WASAPIでは選べませんがDSでは選べます(実際8bitモノラルとかに設定すると音が変わることが確認できます)。リサンプリングが発生する場合はOS側かQT側、どちらで行うか決められるってことですね。
 音質ですが、AAC128kbpsをちょっと聴いた限りで差は感じませんでした。

 ところで、≪iTunes 10.0.0≫+≪QT 7.6.7≫において「DSのフォーマット設定やトーンコントロールなどのQT側設定」を極端な値に振ってみても、≪iTunes≫の再生音は変わりませんでした。≪QT≫再生では変化したんですけど。
 ということは「≪QuickTime≫がバックエンドの再生プログラム本体で≪iTunes≫はフロントエンドに過ぎない」って説明はちょっと違うのかも。≪iTunes≫と≪QT≫の同時再生もできますしね。


■「Windowsは音質が悪い」の謎は解明されたのか

 藤本氏は上記より前に以下のような記事を書いてらっしゃいます。

第528回:「Windowsオーディオエンジンで音質劣化」を検証
~ASIO/WASAPI利用時と比較。劣化回避の方法は? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/20121112_572414.html

第530回:「Windowsオーディオエンジンで音質劣化」検証その2
~WMPにリミッター回避プラグイン。Windows 8では改善も ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/20121126_575257.html

 これらで「Windowsではオーディオエンジンを通すと音質が劣化する」という証明を行っていらして、その続編として今回「じゃあMacは?」という流れに≪iTunes≫のバージョン違いの検証を兼ねているということになっています。

 このWindowsの記事を読んだ時、「いわゆる“カーネルミキサ”での音質劣化を客観的に証明したのは価値あるなぁ」と感心したのと同時に、「Macはどうなのかも確認して欲しいなぁ」と思いました。
 また、タイトルでまでちゃんと“Windowsオーディオエンジン”と断ってありますが、読者の中では“Windows”に省略されて、Windowsは音が悪い=きっと=やっぱりMacがいいっていう短絡論に繋がっちゃうのだろうという危惧も感じておりました。

 今回、Macに関してもシリーズで検証されたのは流石と思います。
 それによって、Macは標準で…というか“≪iTunes≫でさえ”ビットパーフェクトが可能であることが解りましたので、確かに“普通に意識しないで使うなら”その分だけ音質には有利と言えると思います(それって本質的には上記短絡論とは関係ない話なのですが、その証明に位置づけられてしまいそうですね(苦笑))。

 しかしながら、Windowsの音質劣化(デジタルデータが改変されるという意味で)が避けられないのはあくまでも「ビットパーフェクトが可能なAPIに対応していないiTunesやDAWソフトに限ってのこと」です。氏も「やはりWindowsで音楽を再生するのであればASIOやWASAPIを使うべきであるということ」と結論されている通り(もちろんWASAPIは排他モードのことです)。

 つまり、極論すると「≪iTunes≫(や≪WMP≫)至上主義の方以外には関係ない話」です。そして、音質を求めるPC-Audioにおいては多少利便性を失ってもビットパーフェクトが出来るならそれを優先するでしょうから、Windowsがそんなに不利な環境とも思えません。

 ブラックボックスな演算が入る時点でAudioとしては使用するに足らぬこと、WASAPI記事に記した通りです。

 排他WASAPI(その他しかるべきAPI)ならWindowsでもビットパーフェクトでDACにデータを届けることは可能なワケですから、ことデジタルデータをDACに送り付ける装置としては、「WindowsはMacやLinuxより音が悪い」という客観的証明はなされていないと思っています。


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